妊娠とドライマウス|唾液減少が引き起こす虫歯・口臭リスクと対策
妊娠中の「口が渇く」を代弁—不安と放置リスクの見取り図
「妊婦なのに口がカラカラ」—起こりやすい場面(つわり・就寝中・外出時)
妊婦の方が「口がカラカラ」と感じやすい典型場面は、まずつわり期です。吐き気で飲食が途切れ、口呼吸や胃酸逆流が重なると唾液減少が進みドライマウスを自覚しやすくなります。次に就寝中。鼻閉やいびき、室内の乾燥で夜間の唾液分泌が下がり、起床時のねばつき・口臭が強まります。
外出時は補水のタイミングが取りづらく、暑熱・会話量の増加・マスク着用が重なると乾燥が助長。鉄剤や抗ヒスタミン薬など一部の服薬、ストレスや睡眠不足も体感を悪化させます。同じ状況でも日によって揺れがある点も不安の種です。
放置で高まりやすいリスク(虫歯・歯周病・口臭)の全体像
唾液は「自浄・緩衝・抗菌・再石灰化」という口腔の防御を担います。唾液減少が続くとプラークが停滞し、口腔内pHが酸性側へ傾いて初期むし歯が進みやすくなります。
妊娠期はホルモン変動で歯肉が腫れやすく、同じプラーク量でも炎症(妊娠性歯肉炎)が強まり出血や口臭が目立ちます。嘔吐や逆流に伴う酸はエナメル質を軟化させ、直後の強いブラッシングで摩耗・知覚過敏の誘因に。舌苔が増え揮発性硫黄化合物が上がると口臭が悪化し、清掃がしづらい悪循環に陥ります。
放置は「むし歯の進行」「歯周病の増悪」「口臭の顕在化」を招きやすいため、妊婦のドライマウスは早めの評価と日常ケアの見直しが有用です。
受診の判断軸:一過性の乾きか、日常生活に支障があるか
一過性の口渇は休息・補水・加湿で軽快しやすい一方、①十分に水分を取っても数日以上続く強い乾燥やねばつき、②会話・食事・睡眠に支障が出る、③歯肉出血・しみる痛み・舌の白苔増加・急な口臭悪化がある場合は歯科受診を検討しましょう。
妊娠中でも予防処置や指導は一般に可能です。受診前には妊娠週数・既往歴・服薬・アレルギー・つわりの程度を整理し、母子健康手帳を持参すると安全な評価につながります。強い口渇に頻尿や著しい倦怠感を伴う場合は内科相談も視野に。
セルフケアとしては、こまめな少量補水、就寝前の保湿ジェルや無糖キシリトールガム、吐いた直後は水や重曹水で洗口後に時間を置いて歯磨き—といった工夫が有効です。
ドライマウスの基礎—唾液減少と口臭のつながり
唾液の役割:自浄・緩衝・抗菌・再石灰化の要点整理
唾液は口の健康を守る“多機能の液体”です。食べかすや細菌を洗い流す自浄作用、飲食で酸性に傾いた口内を元へ戻す緩衝能、細菌の増殖を抑える抗菌作用、失われたミネラルを歯面に戻す再石灰化が代表的な役割です。
さらに粘膜を潤し、咀嚼・嚥下・会話を助け、味覚の安定にも関与します。唾液にはカルシウムやリン酸、重炭酸などが含まれ、食後の酸から歯を守ります。妊婦ではホルモン変動やつわり、脱水傾向などが重なると唾液の量や粘性が変わりやすく、唾液減少が続くとむし歯・歯周病・口臭のリスクが上がるため注意が必要です。
「唾液減少」と「口渇感」は別物—感じ方の個人差
「唾液減少(客観的な分泌低下)」と「口渇感(主観的な渇き)」は必ずしも一致しません。緊張・ストレス・睡眠不足・口呼吸・一部の薬剤の影響で、唾液量が正常でも強い乾きを感じることがあり、逆に分泌が低くても自覚に乏しい場合もあります。
妊婦では体調の波やつわりで感じ方が揺れがちです。ねばつき、味の変化、舌のひりつき、口臭の自覚が続くときは評価が有用です。「水分を取ってもすぐ乾く」「夜間の口渇で目が覚める」など日常生活に影響が出る場合は、妊婦 ドライマウスの視点で歯科に相談し、唾液減少の有無や背景要因(口呼吸、服薬、生活習慣)を一緒に確認しましょう。
口臭が強まる仕組み:量・粘性・pH変化の視点
口臭は主に舌苔や歯周ポケットで細菌がたんぱく質を分解し、硫化水素・メチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物(VSC・口臭のもとになる硫黄ガス)が増えることで強まります。唾液量が減ると洗い流す力が弱まり、粘性が高いほど舌苔が付着・停滞しやすく、におい物質が産生されやすい状態になります。
さらに口腔内pHが乱れると細菌のバランスや酵素活性が変化し、VSC産生が促されます。妊婦で嘔気や逆流があると酸の影響で歯面が一時的に軟化し、清掃不良が重なると口臭の自覚が強くなりがちです。妊婦 ドライマウスに伴う唾液減少・口臭は、量・粘性・pHという三つの視点で捉えることが大切です。
妊娠期の変化が口の乾きに及ぼす影響—核心をやさしく解説
ホルモン変動(エストロゲン・プロゲステロン)と唾液腺機能
妊娠に伴いエストロゲンとプロゲステロンが上昇・変動すると、自律神経の調整や唾液腺の血流・水分輸送に影響し、唾液の量や粘性が揺れやすくなります。分泌量が軽度に低下したり粘つきが増すと、舌や頬粘膜の「ひりつき」「ねばつき」といったドライマウス症状を自覚しやすく、妊婦ではこれが唾液減少や口臭の気づきにつながります。
加えて、味覚・食嗜好の変化、鉄剤など一部薬剤、ストレスや睡眠不足は口渇感を増幅させます。なお「実際の分泌低下」と「渇きの感じ方」は必ずしも一致しません。
数日以上の強い乾燥、会話や食事に支障、歯肉出血やしみる痛みが重なる場合は、妊婦 ドライマウスの視点で原因(口呼吸、服薬、生活リズム)を丁寧に評価し、無理のない保湿・清掃計画を立てることが大切です。
つわり・胃酸逆流と酸蝕のリスク増大
つわりに伴う嘔吐や胃食道逆流は、口腔内を一時的に強い酸性に傾け、エナメル質を軟化させます。このタイミングで力を入れて歯を磨くと、酸で柔らいだ歯面が摩耗し、知覚過敏やう蝕リスクが上がります。
嘔吐直後は水や生理食塩水・重曹水でやさしく洗口し、30分程度おいてからフッ化物配合歯磨剤でブラッシングするのが安全です。嘔吐が頻回だと唾液の緩衝能・自浄作用が追いつかず舌苔が増え、揮発性硫- 揮発性硫黄化合物の産生が進んで口臭を自覚しやすくなります。
間食は「回数より質」を意識し、酸性飲料や粘着性の高い甘味をだらだら摂らないことがポイントです。妊婦の唾液減少が疑われる場合は、就寝前の1450ppmF歯磨剤やフッ化物洗口、保湿ジェルの併用、定期的な専門清掃・リスク評価を検討すると良いでしょう。
鼻閉・口呼吸・睡眠の質と夜間口渇
妊娠期は粘膜のうっ血で鼻閉が起こりやすく、就寝時に口呼吸が増えると気流で蒸発が進み、夜間の強い口渇や起床時のねばつき、口臭の増悪につながります。睡眠の分断や浅眠は痛み・不快感の感受性を上げ、ドライマウスの体感を強めます。
対応として、寝室の適度な加湿、枕の高さ調整や左側臥位で気道・逆流双方に配慮、就寝前の丁寧なプラークコントロール(フロス→歯磨き→低刺激性洗口液)と口腔保湿のルーティン化が有効です。枕元に少量の水を用意し、起床後は舌背の優しい清掃で舌苔をため込まない工夫を。
日中は鼻呼吸を意識し、乾燥が強い日は無糖キシリトールガムで唾液分泌を促すのも一案です。鼻閉やいびきが強く持続する、日中の眠気や頭痛を伴う場合は耳鼻科・歯科で評価を受け、妊婦 ドライマウスと関連する口臭・唾液減少への介入を相談しましょう。
妊娠中でも可能な対策と治療の考え方
応急処置はいつでも、計画治療は中期が目安
歯の激しい痛みや腫れなどの急性症状は、妊娠時期にかかわらず母体の負担を軽減する目的で適切な応急処置を優先して行うことが推奨されます。強い痛みは睡眠や食事を妨げ、結果として全身状態に影響しやすいため、我慢せず歯科で評価を受けることが大切です。
計画的な治療は一般に妊娠中期(13〜27週)を目安に、短時間のアポイント、こまめな体位変換、左側臥位の配慮などを組み合わせて安全性に配慮して進めます。
受診の際は母子健康手帳、妊娠週数、既往歴、服薬中の薬剤、産科主治医の指示内容を共有すると、判断が円滑になりやすいです。妊婦のドライマウスが背景にある場合は、唾液減少によるプラーク停滞や口臭の変化も治療計画に影響するため、症状の出やすい時間帯や生活リズムを併せて伝えると適切な助言につながります。
軽度で緊急性の低い処置は産後へ先送りする選択が合理的な場合もあり、母体と胎児の利益のバランスを踏まえた個別判断が重要です。体調の波が大きい日は無理をせず、こまめな休憩や早めの再予約を活用すると安心して通院しやすくなります。
フッ化物応用・キシリトール・保湿ジェル等の選択肢
日常ケアでは1450ppmFのフッ化物配合歯磨剤を用い、フロスや歯間ブラシで機械的にプラークを減らすことが基本です。妊婦のドライマウスでは唾液減少により自浄作用が低下しやすいため、就寝前に保湿ジェルや唾液代替剤を併用し、口腔粘膜の乾燥を和らげると不快感の軽減に役立ちます。
無糖キシリトールガムやタブレットは咀嚼刺激による唾液分泌の促進に有用であり、間食が多くなりがちな時期のpH管理にも寄与します。つわりで嘔吐がある場合は、直後に水や薄い重曹水でやさしく洗口し、30分ほど経ってからブラッシングを行うとエナメル質の摩耗予防に有効です。
飲料は常温水を基本に、少量頻回の補水と室内の加湿を組み合わせると乾燥感の悪化を抑えやすいです。洗口液はノンアルコールタイプを選び、刺激感が強い場合は濃度や使用回数を歯科で相談するとよいです。
甘味や酸性度の高い食品のだらだら摂取は口臭やう蝕リスクを高めやすいため、回数よりも質を整える意識が役立ちます。セルフケアで改善が乏しいときは、専門的クリーニングやフッ化物応用の頻度を歯科で調整し、無理のない継続可能なケア計画を立てることが大切です。
「必要最小限」と防護の原則(レントゲン・局所麻酔の扱い)
画像診断は治療判断に必要な場合に限定し、デジタル撮影、撮影枚数の最小化、鉛エプロンや甲状腺防護の使用などで被ばくを抑えることが基本です。歯科用レントゲンは照射野が限局し、適切な防護下では一般に低線量ですが、目的と代替手段の有無を歯科医師が丁寧に評価したうえで実施します。
局所麻酔は必要最小量で使用し、バイタルサインや体位に配慮して安全性を高めます。妊娠中の局所麻酔薬の選択は全身状態や既往、妊娠週数を踏まえ、過度な疼痛やストレスを避ける観点から利益とリスクを総合的に判断します。
鎮痛薬や抗菌薬は自己判断での服用を避け、産科主治医と情報を共有して可否を確認します。処置中は仰臥位低血圧症候群(仰向けで長く寝ると血圧が下がって気分が悪くなること)を避けるための姿勢調整、短時間の分割アポイント、術中のコミュニケーションによる不安軽減が有効です。
妊婦のドライマウスに伴う唾液減少や口臭が強い場合は、撮影や麻酔の適応に直接影響はしにくい一方で、プラークコントロールの難易度や清掃指導の内容に関わるため、事前に症状を共有しておくとよいです。
最終的には「必要最小限」と「十分な防護」という二つの原則を守り、産科と歯科が連携して個別最適の治療計画を組み立てることが安心につながります。
今日からできるセルフケア—唾液減少・口臭への実践プラン
こまめな水分・適度な加湿・鼻呼吸トレーニング
妊婦のドライマウス対策は「少量をこまめに飲む」が基本です。冷水を一気飲みするより、常温水を口に含むように摂ると粘膜のうるおいが保ちやすく、唾液減少時のねばつきや口臭の悪化を抑えやすいです。
砂糖や酸の強い飲料はだらだら飲まないようにします。
室内は湿度40〜60%を目安に加湿し、日中は鼻呼吸を意識します。
頬や舌をゆっくり動かす体操や、無糖キシリトールガムを数分噛む方法も唾液分泌の助けになります。
鼻閉が強い日は鼻洗浄や横向き寝を取り入れ、無理のない範囲で継続していきます。
つわり時:吐いた直後は洗口→時間を置いて歯磨き
つわりで吐いた直後は口腔内が酸性に傾き、歯が一時的に軟らかくなっています。すぐに強く磨くと摩耗の原因になるため、まず水や薄い重曹水で軽くすすぎ、30分ほど時間を置いてからブラッシングを行います。
歯ブラシはやわらかめを選び、1450ppmF歯磨剤を米粒大から始めて無理のない量に調整します。冷たい飲料や氷片は吐き気の軽減に役立つことがあります。嘔吐が続く日は無糖タブレットや保湿ジェルを併用し、妊婦 ドライマウスに伴う乾燥感や口臭の不快感を和らげていきます。
就寝前のルーティン:1450ppmF歯磨剤+フロス+保湿
就寝前は細菌が増えやすい時間帯に備える大切な習慣づけのタイミングです。フロスや歯間ブラシで歯と歯の間のプラークを除去してから、1450ppmFの歯磨剤で丁寧に磨き、うがいは少なめにして成分を歯面に残します。
舌は先端を中心に軽くケアし、強い擦過は避けます。最後に保湿ジェルや唾液代替剤を薄く塗布し、枕元に常温水を用意します。甘味や酸性飲料の就寝直前の摂取を控えると、唾液減少時の口臭やう蝕リスクの低減につながります。
産科と歯科の連携で安心を高める—受診前の準備
・主治医へ共有:週数・既往・服薬・合併症の要点
産科主治医に確認のうえ、歯科へは①妊娠週数・予定日、②既往歴(流早産歴、甲状腺・心疾患など)と現在の合併症(妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病など)、③服薬・サプリ(鉄剤、葉酸、制吐薬、低用量アスピリン、抗ヒスタミン等)、④薬物・金属アレルギー、⑤出血傾向や麻酔既往を共有します。
妊婦のドライマウスの有無、唾液減少に伴うねばつき・口臭、嘔吐頻度や口呼吸、睡眠の質といった生活情報も合わせて伝えると、評価と処置計画の適合性が高まります。可能であればレントゲン撮影や鎮痛薬の可否、体位制限などの注意点を産科から文書で受け取り提示すると、判断がより円滑になります。
歯科受診時の配慮:体位・時間・休憩
受診は体調が安定しやすい中期や、つわりの軽い時間帯を選ぶと負担を減らせます。仰臥位低血圧症候群を避けるため、右臀部にクッションを入れて左側へ軽く傾ける体位を基本とし、30〜45分程度の短時間アポイントとこまめな休憩・体位変換を取り入れます。
トイレや補水は遠慮なく申し出ていただいて問題ありません。開口維持で乾燥が強まりやすい妊婦 ドライマウスでは、吸引のこまめな使用や口唇保護、刺激の少ない防湿が有用です。
起き上がりはゆっくり行い、めまい・動悸・気分不快があれば直ちに中断し体位を調整します。香料の強い製品を避ける、室温を適度に保つといった環境配慮も快適さに寄与します。
母子健康手帳・服薬リスト・過去画像の持参
母子健康手帳は妊娠週数、検査結果、注意事項を正確に共有するために必携です。服薬リスト(処方薬・市販薬・サプリの名称と用量、開始時期)、アレルギー歴、産科の連絡先を紙またはスマートフォンにまとめてお持ちいただくと、安全確認が迅速になります。
過去の歯科画像(レントゲン、口腔内写真、CT所見)や治療記録、ナイトガードの有無も診断の参考になります。妊婦の唾液減少や口臭の経過メモ、嘔吐の回数・誘因、口呼吸の有無などの簡単な記録があると、必要最小限で適切な検査・処置を組み立てやすくなります。
医院選びのチェックポイント
妊婦健診の実績と情報開示
妊婦の方が医院を選ぶ際は、妊婦歯科健診の実績と情報開示の姿勢を確認すると安心です。医療広告ガイドラインに沿い、診療内容、担当者の資格、費用の取り扱い、X線撮影や局所麻酔の方針、感染対策が客観的に示されているかを見ます。
妊婦のドライマウスや唾液減少、口臭に対する評価方法やセルフケア指導の有無、自由診療を勧める際の根拠・想定される不利益の説明も重要です。誇大な表現や体験談のみで優位性をうたう記載が少なく、予約枠の十分さやプライバシー配慮が明記された医院は相談しやすい環境といえます。
予防プログラムと衛生士の説明体制
予防は妊婦の口腔トラブルを減らす土台になります。リスク評価(う蝕、歯周、酸蝕、口臭、唾液量や口呼吸の傾向)に基づき、来院間隔やクリーニング内容を個別に設計しているかを確認します。
歯科衛生士が担当制で、1450ppmF歯磨剤の使い方、フロスや歯間ブラシの選択、無糖キシリトールの活用、保湿ジェルによるドライマウス対策などを時間をかけて説明してくれる体制は心強いです。
つわり時の洗口→時間を置いたブラッシングなど、妊婦特有の状況に合わせた助言が得られるかも選定の目安になります。
産科との連携体制と緊急時の対応フロー
産科主治医との情報共有経路(紹介状・連絡票・電話連絡)が整い、妊娠週数や既往、服薬を踏まえた処置判断ができる体制を確認します。仰臥位低血圧を避ける体位配慮、短時間アポイント、補水や休憩の取り方、必要時のX線・麻酔の適否判断など、標準化されたプロトコルを持つ医院は安心です。
急な嘔気や気分不快が起きた際の中断手順、かかりつけ産科への連絡先、搬送先の明確化も大切です。妊婦のドライマウスや唾液減少、口臭に関する所見を記録し、産科と共有できる仕組みがあれば、より安全で一貫したケアにつながります。
よくある質問(FAQ)—妊婦 ドライマウス 口臭の疑問を整理
ノンアルコール洗口液・無糖ガム・タブレットは使える?
ノンアルコール洗口液は刺激が少なく、妊婦のドライマウスによるねばつきや口臭の軽減に役立つことがあります。
アルコール高濃度や強いメントールは吐き気を誘発しやすいため避けると安心です。
無糖キシリトールガム/タブレットは唾液分泌を促し、pH低下を抑える助けになります。成分(CPCやフッ化物など)は低刺激タイプを選び、使用回数や濃度は歯科で相談すると安全です。就寝直前は少量にとどめ、嘔吐直後はまず水や重曹水で洗口してから用いると歯面保護に有利です。持病や服薬がある場合は産科にも確認するとより安心です。
レントゲン・麻酔・痛み止めの一般的な扱い
歯科用レントゲンは照射範囲が限局しており、必要性が明確な場合に防護(鉛エプロン・甲状腺保護)と最小枚数で実施します。局所麻酔は適応があれば少量で使用され、強い痛みやストレスを抑える利点があります。
痛み止めや抗菌薬は自己判断を避け、妊娠週数・既往・服薬内容を踏まえて歯科と産科で可否を確認します。撮影や投薬の要否は代替手段の有無も含めて検討し、体位(左側臥位)や短時間アポイントで負担軽減に努めます。授乳期に移行する場合の薬剤選択も事前に相談しておくと安心です。
クリーニングやスケーリングは妊娠中でも受けられる?
クリーニングやスケーリングは妊娠中でも多くの方で実施可能です。つわりが落ち着きやすい中期に短時間で行い、仰臥位低血圧を避けるため体位調整や休憩を挟みます。妊婦の唾液減少や口臭がある場合は、超音波の出力や水量、吸引を調整して刺激を最小限にします。
出血や痛みが強いときは範囲を分割し、セルフケア指導と併せて進めると負担が少ないです。歯石除去は妊娠性歯肉炎の改善に有益とされ、フッ化物塗布や保湿ジェルの提案も併用されます。産科から出血傾向や安静指示がある場合は時期や範囲を調整し、無理のない頻度でメンテナンスを継続します。
受診の目安—「相談を急いだほうがよい」サイン
強い口渇が持続+頻尿/白苔や痛み/出血の持続
強い口渇が数日以上続き、頻尿や強い倦怠感を伴う場合は早めの相談が必要です。妊婦のドライマウスで唾液減少が進むと舌の白苔や口角のただれ、しみる痛み、歯肉出血が長引きやすく、口臭の悪化にもつながります。
水分を取っても改善しない、就寝中に何度も目覚めるなど日常生活に支障があれば歯科で評価を受け、必要に応じて産科や内科(血糖・甲状腺など)とも連携して原因を確認します。服薬や口呼吸、睡眠の質も併せて伝えると適切な助言につながります。
つわりが強くブラッシング困難・体重減少を伴う場合
吐き気が強くブラッシングができない状態が続く、体重減少や脱水兆候(尿量低下・めまい)を伴う場合は、受診を急いだほうが安心です。嘔吐後は口腔内が酸性に傾き、軟化した歯面を強く磨くと摩耗が進みます。
まず水や薄い重曹水で洗口し、30分後にやわらかい歯ブラシと1450ppmF歯磨剤でケアすると安全です。
妊婦 ドライマウスでは自浄作用が落ち、口臭や歯肉炎が悪化しやすいため、歯科で清掃方法や保湿ジェルの使い方、来院間隔の調整を相談します。著しい体重減少があるときは産科で全身管理を受けることが重要です。
口臭の急激な悪化や発熱を伴う口腔症状
急に強い口臭が出た、発熱や顔面の腫れ、飲み込みにくさ、開口時の痛みを伴う場合は、細菌感染や膿瘍など緊急性のある疾患が隠れていることがあります。
妊婦の唾液減少で防御機能が下がると感染が広がりやすく、早期の診断と適切な処置が重要です。自己判断で鎮痛薬・抗菌薬を開始せず、歯科を受診して必要最小限の画像検査や処置を受けます。
産科主治医への情報共有(妊娠週数・既往・服薬)を同時に行うと安全性が高まります。夜間に悪化する場合や呼吸苦がある場合は、迷わず医療機関に連絡してください。
産前・産後のロードマップ—再発予防と長期ケアの見取り図
妊娠期→産後のメンテナンス間隔の目安
妊娠中は体調の安定しやすい中期にクリーニングと指導を受け、1〜2か月ごとの短時間メンテナンスを基本とすると安心です。後期は仰臥位低血圧やつわりの波に配慮し、必要に応じて範囲を分割します。
出産後は1か月前後で産後チェックを行い、育児で生活リズムが乱れやすい時期は3か月間隔を目安にします。妊婦のドライマウスや唾液減少、口臭の変化は再発しやすいため、状況に応じて3〜6か月へ伸縮させる柔軟な計画が有用です。
生活・食習慣の再設計(間食頻度・就寝前ケア)
間食は「回数より質」を重視し、砂糖や酸の強い飲料のちびちび飲みを避けます。少量頻回の常温水、無糖キシリトールで唾液分泌を促すと、唾液減少に伴う口臭の悪化を抑えやすいです。就寝前はフロス→1450ppmF歯磨剤→うがい少量→保湿ジェルの順で整え、寝室は湿度40〜60%とします。
つわりや逆流のある日は、吐いた直後に水または薄い重曹水で洗口し、30分待ってから優しく磨くとエナメル質を守れます。日中は鼻呼吸を意識し、口呼吸の癖を減らすと乾燥感が和らぎます。
「まずは専門の歯科医師に相談」へつなぐ次の一歩
受診時は母子健康手帳、産科の連絡先、服薬・サプリの一覧を持参し、乾燥やねばつき、口臭が強い時間帯、嘔吐の頻度や誘因を簡単なメモで共有すると評価が正確になります。
妊婦 ドライマウスの背景要因(口呼吸、睡眠、食習慣)を一緒に整理し、メンテナンス間隔とセルフケアの優先順位を決めます。必要に応じて産科に照会を行い、画像検査や麻酔は「必要最小限・十分な防護」を前提に可否を確認します。
まずは不安な点を遠慮なく伝え、小さな改善から始めることが継続の近道です。
監修:愛育クリニック麻布歯科ユニット
所在地〒:東京都港区南麻布5丁目6-8 総合母子保健センター愛育クリニック
電話番号☎:03-3473-8243
*監修者
愛育クリニック麻布歯科ユニット
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
・日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
・東京都式根島歯科診療所 勤務
・長崎県澤本歯科医院 勤務
・医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
・愛育クリニック麻布歯科ユニット 開設
・愛育幼稚園 校医
・愛育養護学校 校医
・青山一丁目麻布歯科 開設
・区立西麻布保育園 園医
*所属
・日本歯科医師会
・東京都歯科医師会
・東京都港区麻布赤坂歯科医師会
・日本歯周病学会
・日本小児歯科学会
・日本歯科審美学会
・日本口腔インプラント学会
カテゴリー:コラム 投稿日:2025年9月29日