03-3473-8243

平日
9時-19時 
土曜
9時-18時

24時間
予約
LINE
問診票
サンプル
サンプル

港区麻布(南麻布)の歯医者・歯科|愛育クリニック麻布歯科ユニット

※初診の方は総合受付には寄らず、直接歯科受付までお越し下さい。また、問診票の記入のため予約の10分前にご来院頂きますよう宜しくお願いします。

診療時間

9:00〜19:00 ×

土曜日は9:00〜18:00

〒106-8580 東京都港区南麻布5-6-8
総合母子保健センター愛育クリニック

広尾駅徒歩8分 / 英語・中国語可

マップを見る

妊娠中の口のトラブルを防ぐ|歯周病の初期サインと歯科検診のすすめ

 

「もしかして…」その歯の違和感、歯周病のサインかもしれません

歯磨き中の少しの出血、見過ごしていませんか?

毎日の歯磨きで歯ブラシに血がにじんでいたり、洗面台に血が混じったりした時、「強く磨きすぎたかな」と軽く考えてしまってはいないでしょうか。実はその出血は、歯ぐきの炎症サインであり、歯周病の初期にみられる代表的な症状の一つです。
健康な歯ぐきでは、適切な力で磨いた場合に出血は通常みられません。もし出血が続く場合は、磨き方以外の原因が隠れていないか確認しましょう。歯の表面に付着したプラーク(歯垢)に含まれる細菌が出す毒素によって歯ぐきに炎症が起きると、毛細血管が充血し、わずかな刺激でも出血しやすくなります。これは「歯肉炎」と呼ばれる歯周病の初期段階です。この段階であれば、歯科医院での専門的なクリーニングと、正しいセルフケアの継続によって健康な状態に戻せる可能性が高いです。
しかし、このサインを見過ごし放置してしまうと、炎症は歯を支える骨にまで及び、より深刻な「歯周炎」へと進行してしまいます。早期発見のためにも、出血は軽視せず、一度歯科検診を受けることをお勧めします。

 

口臭や歯の浮いた感じ…これは歯周病の初期症状?

お口の臭いが気になったり、朝起きた時に口の中がネバネバしたり、あるいは歯が少し浮いたような違和感は、歯周病に伴う炎症や咬み合わせの負担など、複数の要因で起こり得ます。検診で原因を確かめましょう。これらの自覚症状が現れている場合、すでにある程度の炎症の広がりや骨の破壊が始まっている可能性も考えられます。
ご自身の判断で放置せず、これらのサインが歯周病の初期症状ではないか、歯科検診で専門家による正確な診断を受けることが、歯の健康を守るための大切な一歩となります。

 

多くの人が「自分は大丈夫」と思っている現実

「歯周病は高齢者の病気」「自分には痛みなどの分かりやすい症状がないから大丈夫」と考えている方は少なくありません。
しかし、調査によれば、日本の成人では、歯ぐきの炎症所見など歯周病に関連する兆候がみられる方が多いと報告されており、決して他人事ではないのが現実です。歯周病が「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれるのは、初期から中等度にかけて、痛みなどの自覚症状がほとんどないまま静かに進行していくためです。歯ぐきからの出血や腫れといった初期症状に気づいていても、「そのうち治るだろう」と放置しているうちに、気づいた時には歯を支える骨が大きく失われ、手遅れになってしまうケースも少なくありません。
歯を失う主な原因の一つに、歯周病があります。この「自分は大丈夫」という思い込みと、実際の罹患状況との大きなギャップを埋めるのが、定期的な歯科検診の最も重要な役割です。自覚症状がない段階での早期発見こそが、あなたの歯を生涯にわたって守るための有力な方法なのです。

 

「自覚症状がない=問題ない」ではない歯周病の本当の怖さ

痛みが出た時には、すでに手遅れの場合も

歯周病の最も注意すべき特徴は、初期から中期にかけて痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進行する点です。「歯が痛い」「歯がグラグラする」といった症状を自覚して歯科医院を受診された時には、すでに病状が深刻化しているケースが少なくありません。歯周病による痛みは、歯ぐきが急に腫れて膿が出たり、歯を支える骨(歯槽骨)の破壊が進んで歯が大きく揺れたりして初めて感じることが多いのです。
このような状態は、歯周病が重度にまで進行したサインであり、治療によって炎症を抑えることはできても、失われた骨を元の状態に戻すことは極めて困難です。場合によっては歯を保存することができず、抜歯という選択をせざるを得ないこともあります。痛みがなくても、歯磨き時の出血などの初期症状を見逃さず、定期的な歯科検診で早期発見に努めることが、ご自身の歯を守る上で何よりも重要になります。

 

日本の成人の約8割が罹患しているという事実

「自分は毎日歯を磨いているから大丈夫」と思っていても、歯周病は非常に身近な病気です。近年の調査では、日本の成人のおよそ8割が、程度の差はあれ歯周病に罹患している、またはその予備軍であると報告されています。これは、誰もがかかる可能性のある「国民病」と言っても過言ではない状況です。
特に、歯ぐきのみに炎症が起きている初期段階の「歯肉炎」は10代から見られ、適切なケアを怠ると、30代以降、歯を支える骨にまで影響が及ぶ「歯周炎」へと進行する人が増加します。多くの方がご自身が歯周病であることに気づかないまま生活しているのが実情です。
この「気づかないうちに静かに進行する」という特徴が、高い罹患率の背景にあります。自分は大丈夫だと思わず、まずは歯科検診で専門家による客観的なチェックを受け、ご自身のお口の状態を正しく知ることが、早期発見への第一歩です。

 

歯を失う最大の原因は、虫歯ではなく歯周病

「歯を失う原因」と聞くと、多くの方が「虫歯」を真っ先に思い浮かべるかもしれません。しかし、近年の調査によると、日本人が永久歯を失う原因の第1位は、虫歯ではなく歯周病です。虫歯が歯そのものを溶かしていく病気であるのに対し、歯周病は、歯を支える土台である歯ぐきや骨(歯槽骨)を破壊していく病気です。どんなに白く健康な歯であっても、その土台が失われてしまえば、家が基礎を失って倒れるように、歯は支えを失い、最終的には抜け落ちてしまいます。
さらに、虫歯のように「冷たいものがしみる」「噛むと痛い」といったサインが初期段階では現れにくいため、気づかないうちに深刻な状態に陥りやすいのです。歯科検診による早期発見と予防的な介入が、この歯を失う最大の原因からご自身の歯を守るための、有効性が期待できる手段と言えます。

 

そもそも歯周病とは?お口のトラブルのメカニズム

歯周ポケットで何が起きている?細菌との戦いの最前線

歯と歯ぐきの境目には、「歯周ポケット」と呼ばれるわずかな溝があります。健康な状態ではこの溝は浅いのですが、歯磨きで除去しきれなかったプラーク(歯垢)が溜まると、その中の歯周病菌が増殖します。すると、私たちの体は細菌を排除しようと免疫反応を起こし、歯ぐきに炎症が起こります。これが、歯周ポケットという「戦いの最前線」で起きていることです。
炎症が続くと、歯ぐきは腫れて溝が深くなり、さらにプラークが溜まりやすい悪循環に陥ります。深くなった歯周ポケットの内部は酸素が少ない環境を好む、より悪性度の高い歯周病菌の温床となります。このポケットの深さは歯周病の進行度を測る重要な指標であり、歯科検診では専用の器具で深さを測定します。ご家庭での歯磨きだけでは深いポケットの底のプラークを取り除くことは困難なため、定期的な歯科医院でのクリーニングが不可欠となるのです。

 

歯ぐきの炎症「歯肉炎」と骨が溶ける「歯周炎」の違い

歯周病は、進行度によって大きく二つの段階に分けられます。一つは、炎症が歯ぐき(歯肉)に限定されている初期段階の「歯肉炎」です。歯磨き時の出血などが主な初期症状で、この段階であれば、歯科医院での専門的なクリーニングと毎日の丁寧なセルフケアによって、健康な状態に回復することが可能です。
しかし、歯肉炎が放置され、炎症が歯を支える骨(歯槽骨)や歯根膜にまで及ぶと、「歯周炎」へと進行します。歯周炎になると、歯を支える骨が徐々に溶かされ始め、失われた骨は自然に元へ戻りにくく、条件が合えば再生療法で一部の回復を目指すことがあります。歯肉炎から歯周炎への移行は、痛みなどの自覚症状がないまま静かに進むことが多いため、早期発見が極めて重要です。
歯科検診は、この取り返しのつかなくなる前の、可逆的な段階である歯肉炎を発見し、歯周炎への進行を食い止めるための大切な機会なのです。

 

全身疾患との関連性も指摘される、お口だけの問題ではない歯周病

歯周病は、単にお口の中だけの問題に留まらないことが、近年の多くの研究で明らかになってきています。歯周病菌や、歯ぐきの炎症によって生み出される炎症性物質が、歯周ポケットの血管から全身の血流に入り込むことで、様々な全身疾患のリスクを高める可能性が指摘されています。
具体的には、糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患、誤嚥性肺炎、そして妊娠中の女性においては早産や低体重児出産との関連が報告されています。例えば、糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼし合う関係にあることが知られています。
このように、お口の健康は全身の健康と密接に繋がっています。定期的な歯科検診で歯周病をコントロールすることは、歯を守るだけでなく、将来的な全身の健康リスクを管理する上でも非常に重要な意味を持つのです。

 

なぜ静かに進行するのか?歯周病の「サイレント」な性質

慢性疾患としての特徴:痛みなく骨が溶けていく過程

歯周病が「静かなる病気」と呼ばれるのは、その性質が急激な痛みを伴う急性疾患とは異なり、ゆっくりと進行する慢性疾患であるためです。例えば虫歯の場合、神経に達すると激しい痛みを感じるため、多くの方が異変に気づき歯科医院を受診します。
しかし歯周病は、歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶かされていく過程で、ほとんど痛みを感じさせません。これは、体の防御反応がゆっくりと組織を破壊していくため、脳がそれを「緊急事態」として認識しにくいからです。日々のわずかな出血や歯ぐきの腫れといった初期症状はあっても、強い痛みではないために見過ごされがちです。
そして、歯がグラグラする、硬いものが噛めないといった明らかな症状を自覚した時には、骨の破壊が相当進んでしまっていることが少なくありません。このように痛みという分かりやすい警告がないため、歯科検診による専門的なチェックが、静かに進行する病気の早期発見には不可欠なのです。

 

体の免疫反応が、逆に自身の組織を破壊するジレンマ

歯周病の進行には、私たちの体を守るはずの「免疫反応」が深く関わっています。歯周ポケットに歯周病菌が侵入すると、体は細菌を排除しようとして免疫細胞を送り込み、炎症反応を起こします。この反応は、本来であれば体を守るための正常な働きです。
しかし、歯周病菌の出す毒素や、それに対抗する免疫細胞が放出する物質が、細菌だけでなく、周囲の歯ぐきや歯を支える骨まで攻撃し、破壊してしまうというジレンマが生じます。つまり、細菌と戦っているつもりが、結果的に自分自身の組織を壊してしまうのです。この自己破壊的なプロセスは、強い痛みを伴うことなく、慢性的にじわじわと進行します。
この複雑なメカニズムこそが、自覚症状のないまま歯周病が深刻化する大きな理由の一つです。ご自身の免疫力が関わるからこそ、セルフケアだけではコントロールが難しく、専門家による定期的な介入が必要となるのです。

 

定期的なプロのチェックが不可欠な理由

歯周病が痛みなく進行し、自身の免疫反応によって組織破壊が進むという性質上、ご自身の感覚だけを頼りにした早期発見は極めて困難です。
歯ぐきからの出血などの初期症状に気づけたとしても、それがどの程度進行しているのかを正確に判断することはできません。歯科検診では、専門の器具を使って歯周ポケットの深さをミリ単位で測定し、炎症の範囲や進行度を客観的に評価します。また、レントゲン撮影を行えば、歯ぐきに隠れて外からは見えない歯槽骨の状態を正確に把握でき、どのくらい骨が失われているかを確認できます。
これらは、歯科医師や歯科衛生士といった専門家でなければできない診査・診断です。自分では見えない、感じない部分で静かに進む病気だからこそ、定期的な歯科検診によるプロのチェックが、あなたの歯を歯周病から守るための最も確実で有効な手段となります。

 

早期発見が鍵。ステージ別で見る歯周病治療の選択肢

初期段階(歯肉炎)なら、セルフケア改善で回復も

歯周病の最も初期の段階は「歯肉炎」と呼ばれ、炎症が歯ぐき(歯肉)に限定されている状態を指します。歯磨き時の出血といった初期症状が主なサインですが、この時点では歯を支える骨に影響は及んでいません。
歯肉炎の主な原因は、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)です。そのため、治療の基本は、この原因を徹底的に取り除くことにあります。歯科医院では、専門の器具を用いてプラークや、それが硬化した歯石をきれいに除去します。
同時に、ご自身の毎日のケアが最も重要になるため、歯科衛生士が一人ひとりのお口の状態に合わせた適切な歯磨きの方法を丁寧に指導します。歯肉炎の段階は、このようにプロによるケアとセルフケアの改善によって、歯ぐきの炎症がなくなり健康な状態に回復することが可能な「可逆的」な状態です。歯科検診での早期発見は、この最も負担の少ない段階で進行を食い止めるための良い機会になります。

 

中等度以上で必要となる専門的なクリーニングとは

歯肉炎が進行し、炎症が歯を支える骨にまで達してしまった状態が「歯周炎」です。歯周炎になると歯周ポケットが深くなり、ご自身の歯磨きでは届かない歯の根の表面にまで、歯石や細菌の膜(バイオフィルム)が強固に付着します。この状態になると、通常のクリーニングだけでは汚れを取り除くことができません。
そこで必要となるのが、「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」と呼ばれる専門的な治療です。これは、専用の器具を使って、歯周ポケットの奥深く、歯根面に付着した歯石や汚染されたセメント質を徹底的に除去し、表面を滑らかにする処置です。歯根面をツルツルにすることで、細菌が再付着しにくい環境を整えます。
処置は数回に分けて行い、痛みを伴う場合には局所麻酔を使用することもあります。中等度に進行した歯周病の進行を食い止めるための、基本となる重要な治療です。

 

進行した場合の外科的治療と、その限界について

スケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行っても、歯周ポケットが非常に深い場合や、複雑な形をした歯の根の汚れが取り除けない場合には、歯周外科治療が選択肢となります。代表的な治療法に「フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)」があります。これは、局所麻酔下で歯ぐきを切開・剥離し、歯の根を直接目で確認しながら、SRPでは届かなかった深部の歯石や感染組織を徹底的に除去する手術です。
また、条件が合えば、失われた骨の一部を再生させるための「再生療法」を併用することもあります。しかし、これらの外科的治療をもってしても、一度大きく失われてしまった歯槽骨を完全に元の状態に戻すことは極めて困難です。治療の主な目的は、これ以上の病状の進行を食い止め、歯の寿命を可能な限り延ばすことにあります。
ここまで進行する前に、自覚症状がなくても定期的な歯科検診を受け、早期発見・早期治療に繋げることが何よりも大切です。

 

【妊婦さんへ】妊娠中の歯科検診が特に重要な理由

妊娠中に歯周病が悪化しやすい、ホルモンバランスとの関係

ご妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌が活発になります。実は、この女性ホルモンを好む特定の歯周病菌が存在するため、妊娠中は通常時よりもお口の中で細菌が繁殖しやすい環境になります。また、これらのホルモンは歯ぐきの血管に影響を与え、炎症反応を過敏にさせる働きもあります。そのため、少しのプラーク(歯垢)が付着しただけでも歯ぐきが腫れたり出血しやすくなったりする「妊娠性歯肉炎」という状態を引き起こしやすくなるのです。
これに加えて、つわりで歯磨きが思うようにできなかったり、食事の回数が増えたりすることも、お口の環境が悪化する一因となります。このように、妊娠期はご自身の意思とは関係なく歯周病のリスクが高まる特別な時期です。痛みなどの初期症状がなくても、一度歯科検診を受け、専門家によるクリーニングやケアの方法について指導を受けることが、お口の健康を守るために非常に大切です。

 

早産・低体重児出産リスクと歯周病の関連性

お口の中の健康は、お腹の赤ちゃんにも深く関わっていることが近年の研究で指摘されています。重度の歯周病にかかっている場合、歯ぐきの炎症によって生み出される「プロスタグランジン」などの炎症性物質が、血流に乗って全身に運ばれます。この物質が子宮に達すると、子宮の収縮を促し、陣痛に似た状態を引き起こすことで、早産や低体重児出産のリスクを高める可能性があると考えられています。
そのリスクは、喫煙やアルコール摂取などと同程度に高いとも報告されており、決して軽視できるものではありません。お母さんのお口の中の歯周病菌が、赤ちゃんに直接影響を与えるわけではありませんが、炎症を通じて間接的に影響を及ぼす可能性があるのです。
生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中の歯科検診で歯周病のチェックとコントロールを行うことは、母子双方の健康を守る上で非常に重要な意味を持ちます。

 

安定期が最適?治療に適した時期と安全な麻酔・投薬

妊娠中の歯科治療に対して、お腹の赤ちゃんへの影響をご心配される方は少なくありません。一般的に、歯科治療に適した時期は、つわりが落ち着き、母体の状態が安定する「安定期(妊娠中期:16週~27週頃)」とされています。
もちろん、急な痛みなどがある場合は時期を問わず対応しますが、計画的な治療はこの時期に行うのが望ましいです。治療に際して、局所麻酔は通常量であれば母子ともに影響はほとんどないとされています。レントゲン撮影も、防護エプロンを着用し、お腹から離れたお口周りのみを撮影するため、赤ちゃんへの放射線の影響はごく微量です。
ただし、必要性が高くない限りは撮影を避けるのが一般的です。お薬の処方が必要な場合も、妊娠の時期や状態を考慮し、安全性の高いとされる種類(鎮痛剤であればアセトアミノフェンなど)を選択します。まずは歯科検診で現在のお口の状態を正確に把握し、治療の必要性や最適な時期について、歯科医師と相談することから始めましょう。

 

歯周病の早期発見に繋がる「歯科検診」で何をするのか

歯科検診で行われる歯周ポケット検査とは?

歯科検診における歯周ポケット検査は、歯周病の進行度を客観的に把握するための最も基本的な検査です。プローブと呼ばれる目盛りの付いた細い器具を、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)にそっと挿入し、その深さを測定します。
健康な歯ぐきの場合、溝の深さは1~3mm程度ですが、歯周病が進行すると炎症によってこの溝が深くなっていきます。4mm以上になると歯周炎の可能性が疑われ、深くなるほど重症と判断されます。検査の際には、深さと同時に出血の有無も確認します。器具が触れただけで出血するのは、歯ぐきに炎症が起きているサイン(歯肉炎の初期症状)です。痛みはほとんど感じませんが、少しチクチクとした感覚があるかもしれません。
この検査によって、ご自身では気づくことのできない歯周病の兆候を数値として捉えることができ、症状がない段階での早期発見に不可欠な役割を果たします。

 

レントゲン検査でしか見えない、骨の状態の重要性

歯周病の本当の怖さは、歯を支えている顎の骨(歯槽骨)が溶けてしまう点にあります。歯周ポケット検査で歯ぐきの状態を把握することはできますが、その下にある骨がどの程度失われているかは、外から見ただけでは分かりません。そこで重要になるのがレントゲン検査です。
歯科用のレントゲン写真を撮影することで、歯を支える骨の高さを直接確認することができます。健康な状態では、骨は歯の根の上の方までしっかりと存在しますが、歯周病が進行すると、骨が吸収されて高さが低くなっているのが画像で明確に分かります。
この骨の破壊は、痛みなどの自覚症状がないまま静かに進行するため、レントゲン検査は歯周病の進行度を正確に診断し、適切な治療計画を立てる上で極めて重要な情報源となります。近年のデジタルレントゲンは放射線量も少なく、身体への負担を抑えながら精密な検査が可能です。

 

歯科衛生士によるプロフェッショナルケアの価値

歯科検診において、歯科衛生士は歯周病の予防と管理を担う専門家です。その中心となるのが、スケーリング(歯石除去)に代表されるプロフェッショナルケアです。毎日の歯磨きで取り除ききれなかったプラーク(歯垢)は、唾液中のミネラルと結びついて硬い歯石に変化します。歯石の表面はザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなり、歯周病菌の温床となります。
この歯石は、一度付着してしまうとご自身の歯磨きでは除去できません。歯科衛生士は、専用の器具を用いて、歯の表面はもちろん、歯周ポケットの奥深くなど、ご自身ではケアが難しい部分の歯石や細菌の膜(バイオフィルム)を徹底的に除去します。
また、一人ひとりのお口の状態に合わせ、効果的な歯磨きの方法や補助清掃用具(歯間ブラシやフロス)の使い方を指導することも重要な役割です。定期的なプロフェッショナルケアは、歯周病の早期発見だけでなく、発症そのものを防ぐために不可欠です。

 

信頼できる歯科医院を見つけるための3つのポイント

検査結果や治療方針を丁寧に説明してくれるか

歯科医院を選ぶ上で、コミュニケーションを重視してくれるかどうかは非常に重要なポイントです。歯科検診で撮影したレントゲン写真や、歯周ポケット検査の結果などを示しながら、現在のお口がどのような状態にあるのかを、専門用語を多用せず分かりやすい言葉で説明してくれる歯科医師や歯科衛生士は信頼できるでしょう。
なぜ治療が必要なのか、どのような治療を、どのくらいの期間と費用をかけて行うのか、そしてその治療によってどのような改善が期待できるのか。これらの点について、患者が十分に理解し、納得した上で治療を進める姿勢(インフォームドコンセント)が基本となります。
疑問や不安に思うことを気軽に質問できる雰囲気があるかどうかも大切です。ご自身の体のことだからこそ、一方的に治療を進められるのではなく、現状と未来を共有し、二人三脚で治療に取り組めるパートナーとして信頼できる医院を選びましょう。

 

治療計画の選択肢を複数提示してくれるか

歯周病の治療法は、その進行度や患者さん一人ひとりのお口の状態、さらには生活習慣や価値観によっても、最適なアプローチが異なります。そのため、一つの治療法を絶対的なものとして提示するのではなく、考えられる複数の治療計画をそれぞれのメリット・デメリットと共に示してくれる歯科医院は、患者さん本位の診療を心がけていると言えます。
例えば、保険診療の範囲で行える基本的な治療計画と、より長期的な安定を目指すための自由診療を含む治療計画など、いくつかの選択肢を公平な視点から説明してくれることが理想です。
それぞれの治療法の内容、期間、費用、そして将来的な予後について比較検討することで、ご自身が最も納得できる方法を選択することが可能になります。治療の主役はあくまで患者さん自身です。その意思決定を尊重し、専門家としてサポートしてくれる姿勢を持つ医院を選びましょう。

 

予防歯科や定期メンテナンスに力を入れているか

歯周病は、一度治療が完了しても、その後のケアを怠ると再発しやすいという特徴を持つ慢性疾患です。そのため、「治療して終わり」ではなく、いかにして良好な状態を維持していくかという「予防」の視点が極めて重要になります。信頼できる歯科医院は、この治療後のメンテナンスの重要性を深く理解しており、定期的な歯科検診や専門家によるクリーニングの体制を整えています。
治療計画を立てる段階から、治療後のメンテナンスプログラムについて具体的に説明してくれる医院は、長期的な視点であなたのお口の健康を守ろうと考えている証拠です。ウェブサイトや院内の掲示物などで、予防歯科の重要性について積極的に情報を発信しているかどうかも、医院の姿勢を知る上での一つの判断材料になります。
その場しのぎの治療ではなく、生涯にわたってご自身の歯で健康に過ごすためのサポートをしてくれる医院を選びましょう。

 

歯周病と歯科検診に関するよくある質問(FAQ)

歯科検診は、どのくらいの頻度で受けるべき?

歯科検診を受ける頻度は、お口の状態によって一人ひとり異なりますが、一般的には3ヶ月から6ヶ月に一度の受診が推奨されています。なぜなら、歯周病の原因となるプラーク(歯垢)や細菌の膜(バイオフィルム)は、毎日の歯磨きを丁寧に行っていても、3ヶ月ほどで再び形成され始め、歯周病のリスクを高める可能性があるからです。
特に歯周病が進行しやすい方や、ご自身でのケアが難しい部分がある方は、3ヶ月ごとの検診でこまめにチェックとクリーニングを行うことが理想的です。一方、お口の状態が安定している方は、6ヶ月に一度の検診でも良好な状態を維持できる場合があります。
ご自身の歯周病リスクやセルフケアの状況を歯科医師や歯科衛生士が専門的な視点で評価し、あなたに合った最適な検診間隔を提案します。定期的な受診は、歯周病の早期発見にも繋がり、結果的に歯を守るための最も効果的な習慣となります。

 

費用はどのくらいかかりますか?保険は適用されますか?

歯周病の早期発見を目的とした歯科検診や、初期段階の歯周病治療(歯石除去など)は、基本的に健康保険が適用されます。費用については、保険の負担割合(1割〜3割)や、その日の検査内容(レントゲン撮影の有無など)、処置の範囲によって変動しますが、目安としては数千円程度となることが多いです。
初診時には、より詳しい検査が必要となる場合があるため、費用が少し高くなる可能性があります。より進行した歯周病に対して行われる外科的な処置や、失われた骨を再生させるための再生療法など、一部の高度な治療については、保険が適用されない自由診療となる場合もあります。
具体的な費用についてご不安な点があれば、治療を開始する前に歯科医院へお尋ねください。お口の状態と必要な治療内容に基づき、費用の概算について事前に説明を受けることが可能です。

 

歯石取りは痛いですか?

歯石取り(スケーリング)で感じる痛みには個人差があり、お口の状態によって大きく異なります。歯ぐきが健康な状態で、歯の表面に付着した比較的少ない歯石を取り除く場合は、痛みを感じることはほとんどありません。多くの方が、歯がツルツルになる心地よさを感じられます。
一方で、歯ぐきに炎症があって腫れていたり、歯周ポケットの深い部分に歯石がこびりついていたりする場合には、器具が触れることで痛みや、水がしみるといった症状を感じることがあります。痛みが予想される場合や、痛みに敏感でご不安な方には、歯ぐきの表面に塗るタイプの麻酔(表面麻酔)や、必要に応じて注射による局所麻酔を使用することも可能です。
処置の前に「痛みが心配です」と歯科医師や歯科衛生士に一言お伝えいただければ、できる限り快適に処置を受けられるよう配慮しますので、どうぞご安心ください。

 

毎日の歯磨きを頑張れば、検診は不要ですか?

結論から申し上げますと、毎日の丁寧な歯磨きを実践されていても、定期的な歯科検診は必要です。セルフケアが歯周病予防の基本であることは間違いありませんが、それだけでは十分とは言えません。
その理由は、一度硬く固まってしまった歯石は、ご自身の歯ブラシでは取り除くことができないからです。また、どんなに丁寧に磨いても、歯並びの複雑な部分や奥歯の後ろ側など、どうしても磨き残しが出やすい場所が存在します。歯科検診は、そうしたセルフケアの限界を補うための「プロによるケア」の機会です。
専門家が専用の器具を用いて歯石や磨き残しを徹底的に除去し、ご自身では気づけない歯周病の初期症状を早期発見します。毎日のセルフケアと、定期的なプロフェッショナルケアは、健康な歯を維持するための車の両輪のような関係です。両方を実践することが、将来にわたってご自身の歯を守ることに繋がります。

 

「まだ大丈夫」から「今のうちに」へ。未来の健康を守る第一歩

歯周病の早期発見が、将来の医療費を抑えることにも繋がる

歯周病の初期症状は軽微なため、「まだ大丈夫」と歯科検診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、その判断が将来的に大きな経済的負担に繋がる可能性があります。歯周病は、初期段階の歯肉炎であれば、保険適用の基本的なクリーニングとセルフケアの改善で健康な状態に戻すことが期待できます。
しかし、進行して歯を支える骨が失われると、治療はより複雑になり、外科的な処置や、場合によっては抜歯後のインプラント、ブリッジ、入れ歯といった補綴治療が必要となります。これらの治療には、保険が適用されない自由診療の選択肢も多く、高額な費用がかかることも少なくありません。
定期的な歯科検診は、一見すると費用がかかるように思えるかもしれませんが、歯周病の早期発見・早期治療に繋がり、将来的に必要となるであろう高度な治療を防ぐための、将来的な治療負担の軽減につながることが期待できます。今のうちに数千円で受けられる検診が、将来の数十万円、数百万円の出費を防ぐことに繋がるのです。

 

自分の歯で生涯食事を楽しむために、今できること

ご自身の歯で、好きなものを美味しく食べられることは、生活の質(QOL)を維持する上で非常に大切な要素です。しかし、歯周病によって歯を失うと、その当たり前だった喜びが損なわれてしまいます。入れ歯やブリッジでは、天然の歯と同じように硬いものを噛むのが難しくなったり、食べ物の味が分かりにくくなったりすることがあります。
歯周病は、自覚症状がないまま静かに進行し、気づいた時には手遅れで歯を失う最大の原因です。生涯にわたって食事を楽しむという未来を守るために、「今できること」は決して難しいことではありません。
それは、ご自身の歯の状態に関心を持ち、専門家による定期的なチェックを受ける習慣をつけることです。歯磨き時の出血などの小さなサインを見逃さず、痛みや不自由を感じる前に歯科検診を受けること。その一歩が、歯周病の早期発見を可能にし、あなたの歯の寿命を延ばし、未来の食生活の豊かさを守ることに直結します。

 

まずは専門家への相談から。不安を安心に変える検診へ

ここまで歯周病について解説してきましたが、この記事を読んで「もしかしたら自分も…」と少しでも不安に感じられたかもしれません。
しかし、その不安は、ご自身のお口の健康に関心を持ち始めた証拠であり、大切な第一歩です。大切なのは、その不安を一人で抱え込まず、専門家である私たち歯科医師や歯科衛生士に相談していただくことです。歯科検診は、単に虫歯や歯周病を見つけるだけの場ではありません。あなたが抱えている疑問や不安をお聞きし、専門的な知識と客観的な検査結果に基づいて、現在の状態を正確にお伝えすることで、漠然とした不安を具体的な「安心」や「次への目標」に変えるための時間です。
特別な準備は何もいりません。「しばらく歯医者に行っていないから気になる」という理由だけで十分です。まずは、お口の健康診断を受けるような気軽な気持ちで、歯科医院の扉をたたいてみてください。

監修:愛育クリニック麻布歯科ユニット
所在地〒:東京都港区南麻布5丁目6-8 総合母子保健センター愛育クリニック
電話番号☎:03-3473-8243

*監修者
愛育クリニック麻布歯科ユニット
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
東京都式根島歯科診療所 勤務
長崎県澤本歯科医院 勤務
医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
愛育クリニック麻布歯科ユニット 開設
愛育幼稚園 校医
愛育養護学校 校医
・青山一丁目麻布歯科 開設
区立西麻布保育園 園医
*所属
日本歯科医師会
東京都歯科医師会
東京都港区麻布赤坂歯科医師会
日本歯周病学会
日本小児歯科学会
日本歯科審美学会
日本口腔インプラント学会

カテゴリー:コラム  投稿日:2025年10月30日