妊娠中の歯周病が早産を招く?予防のための歯科受診計画
妊娠中の歯科受診に不安を感じていませんか
妊娠中は歯医者に行かない方がいいのでは、という迷い
妊娠が分かってから、「この時期に歯医者に行っても大丈夫なのだろうか」「刺激や治療が赤ちゃんに影響しないだろうか」と迷われる方は少なくありません。
特に妊娠初期は体調が不安定になりやすく、周囲から「妊娠中は歯科受診を控えた方がいい」と言われた経験が、不安を強めている場合もあります。しかし、妊娠中だから一律に歯科受診を避けるべき、という考え方は現在の医療では主流ではありません。
むしろ、妊婦さんはホルモンバランスの変化により歯ぐきに炎症が起こりやすく、歯周病のリスクが高まる時期とされています。歯周病は進行すると全身の炎症反応に関与し、早産との関連が指摘されることもあります。
こうした背景から、妊娠中の歯科検診は「不要なもの」ではなく、リスクを正しく把握し予防につなげるための大切な選択肢の一つと考えられています。
体調の変化で口のケアまで手が回らない現実
妊娠中は、つわりによる吐き気や倦怠感、眠気など、日常生活そのものが大きく変化します。その中で、これまで当たり前にできていた歯みがきやフロスがつらくなり、「口の中のケアまで気が回らない」と感じるのは自然なことです。
実際、歯ブラシを口に入れるだけで吐き気を催す方も多く、清掃不足が続きやすい時期でもあります。その結果、歯ぐきが腫れやすくなったり、出血しやすくなったりして、歯周病が進行しやすい環境が整ってしまうことがあります。妊婦さんの歯周病は、本人の自覚症状が軽いまま進行することもあり、「忙しさ」や「体調不良」に紛れて見過ごされがちです。
だからこそ、無理に完璧なセルフケアを求めるのではなく、専門家によるチェックやアドバイスを受けることで、今の状態に合った無理のない予防方法を知ることが重要になります。
お腹の赤ちゃんへの影響が心配で受診をためらう気持ち
妊娠中の歯科受診をためらう最大の理由は、「お腹の赤ちゃんに何かあったらどうしよう」という強い不安ではないでしょうか。レントゲンや薬、治療中の姿勢など、分からないことが多いほど心配は大きくなります。この気持ちは、母親として自然で大切な感情です。
一方で、歯周病などの口腔内の炎症を放置することが、結果的に妊婦さん自身の体調や妊娠経過に影響を及ぼす可能性があることも、正しく知っておく必要があります。歯科医療の現場では、妊娠週数や体調を十分に考慮し、安全性に配慮した検診や対応が行われています。
すべての処置を急ぐわけではなく、「今は何を確認し、何を予防すべきか」を整理することが歯科受診の目的です。
赤ちゃんを守りたいからこそ、必要以上に我慢するのではなく、専門家に相談しながらリスクを管理していく姿勢が、妊娠期の歯科との上手な付き合い方といえるでしょう。
妊娠中の体の変化とお口の環境を知る
ホルモンバランスの変化が歯ぐきに与える影響
妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が大きく増加します。これらのホルモンは妊娠を維持するために重要な役割を果たしますが、一方で歯ぐきの血流を増やし、炎症が起こりやすい状態をつくることが知られています。
その結果、歯垢(プラーク)の量が以前と変わらなくても、歯ぐきが腫れたり、歯みがきの際に出血しやすくなったりすることがあります。これは「ケア不足」というより、妊娠という生理的変化による影響が大きいと考えられています。
こうした状態が続くと、歯周病が進行しやすくなり、妊婦さん自身の口腔内トラブルにつながるだけでなく、全身の炎症反応が高まるリスクも否定できません。妊娠中は体の変化を前提に、これまで以上に丁寧な観察と予防の視点を持つことが大切です。
妊娠性歯肉炎・歯周病とは何か
妊娠中に歯ぐきの腫れや出血が目立つようになる状態は、「妊娠性歯肉炎」と呼ばれることがあります。これは、ホルモンバランスの変化によって歯ぐきが刺激に敏感になり、軽い汚れでも炎症が起こりやすくなることが背景にあります。
妊娠性歯肉炎自体は、適切なケアや管理によって落ち着くことも多い一方、放置すると歯周病へ移行する可能性があります。歯周病は、歯を支える骨や組織が徐々に破壊されていく慢性的な炎症性疾患であり、進行しても痛みが出にくいのが特徴です。
妊婦さんの場合、この気づきにくさが受診の遅れにつながり、結果としてリスクが高まることがあります。妊娠中だからこそ、「一時的なもの」と自己判断せず、歯科医師による評価を受けることが予防の第一歩になります。
つわりや生活リズムの変化と口腔ケアの関係
妊娠初期に多くの方が経験するつわりは、口腔ケアにも大きな影響を与えます。歯ブラシを口に入れることで吐き気が誘発され、十分な歯みがきができなくなるケースは珍しくありません。
また、食事回数が不規則になったり、酸味のあるものを口にする機会が増えたりすることで、口の中が酸性に傾きやすくなります。こうした状態は、歯垢がたまりやすく、歯周病のリスクを高める要因となります。
さらに、妊娠中は生活リズムそのものが変化し、疲労や睡眠不足からセルフケアへの意識が低下することもあります。重要なのは、「理想的なケアができない自分」を責めることではなく、今の体調に合った現実的な予防方法を知ることです。
歯科医院では、つわりがある妊婦さんでも取り入れやすいケアの工夫や、無理のない受診タイミングについて相談することができます。
妊婦の歯周病と早産リスクの関係
なぜ歯周病が全身に影響すると考えられているのか
歯周病は、歯ぐきの腫れや出血だけの病気と思われがちですが、実際には「慢性的な炎症」が体の中で続いている状態です。
歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)に細菌を含む歯垢(プラーク)がたまると、免疫反応が起こり、炎症性物質が産生されます。
この炎症が長引くと、歯周ポケット内の粘膜は傷つきやすくなり、歯周病菌やその産生物が血流に乗りやすい環境になります。
その結果、口の中の炎症が“局所”にとどまらず、全身の炎症反応に影響し得る、という考え方が広がってきました。
妊婦さんの場合、妊娠に伴うホルモン変化で歯ぐきが腫れやすく、歯周病が進行しやすいことがあります。
「妊娠中は歯周病のリスクが上がりやすい」という前提を知っておくことが、早めの予防や歯科受診計画につながります。
炎症と早産リスクの関連についての医学的知見
早産の原因はひとつではなく、感染や炎症、子宮頸管の状態、既往歴、生活環境など多くの要因が関わります。
その中で、歯周病による慢性炎症が、早産リスクと関連する可能性が指摘されてきました。
考え方としては、歯周病によって増える炎症性物質(サイトカインなど)が全身に影響し、妊娠の維持に関わる生体反応に影響するのではないか、という仮説です。
また、歯周病菌そのものや関連する感染が、体の炎症状態を高める“きっかけ”になり得ることも議論されています。
ただし、ここで重要なのは「歯周病がある=必ず早産になる」という単純な因果ではない点です。
研究の結果は一様ではなく、関連が示唆される一方で、個々の背景(喫煙、体調、既往症、口腔内の状態など)によって影響の大きさが変わり得ます。
だからこそ、妊婦さんの歯周病は“怖がる”よりも、“管理できるリスク”として予防・コントロールしていく視点が大切です。
リスクを正しく理解するための考え方
「リスク」という言葉は不安を強めやすい反面、上手に捉えると行動の指針になります。
妊婦さんにとって大切なのは、早産リスクをゼロか100かで考えるのではなく、「下げられる要因があるか」を冷静に見ていくことです。
歯周病は、進行度の評価や、日々のケア・歯科での管理によって状態を改善しやすい疾患のひとつです。
つまり、妊娠中の歯科検診は、単なる“虫歯チェック”ではなく、歯周病の有無や重症度を把握し、予防計画を立てる機会になります。
また、妊娠中は体調が日々変わるため、「今できること」と「出産後に回すこと」を分けて考えるのも現実的です。
痛みがなくても出血や腫れがある、口臭が気になる、歯ぐきがむずがゆい——こうしたサインは歯周病の入口になります。
不安があるときほど、自己判断で抱え込まず、妊娠週数や体調を踏まえて歯科医師に相談し、無理のない予防を積み重ねることが、安心につながります。
妊娠中でも歯科検診は受けられる
妊娠時期別にみた歯科受診の考え方
妊娠中の歯科受診は、妊娠の時期によって考え方が異なります。
一般的に、妊娠初期はつわりや体調変化が大きく、長時間の診療が負担になることがあります。そのため、この時期は「無理のない範囲での検診」や「緊急性のある症状への対応」が中心になります。
妊娠中期は、体調が比較的安定しやすく、歯科検診や歯周病のチェック、必要に応じた基本的な処置を検討しやすい時期とされています。
妊婦さんの歯周病は、この時期に状態を把握し、予防や管理を始めることで、早産リスクを含めた将来的な不安を軽減しやすくなります。
妊娠後期は、お腹が大きくなり診療姿勢がつらくなることもあるため、積極的な処置は控えつつ、出産に向けた口腔内の安定を目的とした確認が中心になります。
大切なのは、「いつ行けばいいか分からない」と悩むより、妊娠週数と体調を伝えた上で歯科医師に相談し、今できる範囲の受診計画を立てることです。
検診と治療の違いを知る
妊娠中の歯科受診と聞くと、「治療をされるのではないか」と身構えてしまう方も多いかもしれません。
しかし、歯科検診と治療は目的が異なります。
検診は、虫歯や歯周病の有無、歯ぐきの炎症状態、清掃状況などを確認し、今後のリスクを評価することが主な目的です。
痛みを伴う処置を前提とするものではなく、妊婦さんの体調や妊娠時期に配慮しながら行われます。
一方、治療は症状の進行度や緊急性を踏まえて判断されます。
妊娠中は「今すぐ必要な治療」と「出産後に行う方が望ましい治療」を分けて考えることが基本です。
歯周病の場合も、必ずしも積極的な処置を行うとは限らず、クリーニングやセルフケア指導といった予防的な対応が中心になることがあります。
検診を受けることは、治療を強制されることではなく、妊娠中のリスクを整理するための情報収集と捉えると、気持ちが少し楽になるかもしれません。
歯科医師が妊娠中に配慮しているポイント
歯科医院では、妊婦さんを診療する際に、さまざまな点に配慮しています。
まず重視されるのは、妊娠週数や体調、既往歴などの情報です。これらをもとに、診療内容や時間、姿勢を調整します。
診療中の体勢についても、長時間仰向けにならないよう配慮したり、体調の変化があればすぐに休憩を取れるようにしたりと、安全性を優先した対応が行われます。
レントゲン撮影や薬の使用についても、必要性を慎重に判断し、妊娠中の影響を考慮した選択がなされます。
また、妊婦さん自身が不安を感じやすい時期であることを踏まえ、説明を丁寧に行い、納得した上で進めることも重要な配慮のひとつです。
歯周病や早産リスクについても、不安をあおるのではなく、予防や管理の視点から分かりやすく説明することが求められます。
「妊娠中だからこそ慎重に診てもらえる」という前提を知ることで、歯科検診はより安心して受けられる選択肢になるでしょう。
歯周病は予防と管理ができる疾患
早期発見・早期対応が重要な理由
歯周病は、初期の段階では痛みや強い違和感が出にくく、自覚しないまま進行しやすい疾患です。
特に妊婦さんの場合、ホルモンバランスの変化によって歯ぐきが腫れやすく、出血しやすい状態になるため、「妊娠中だから仕方がない」と見過ごされてしまうことがあります。
しかし、歯周病は進行すると歯を支える骨に影響を及ぼし、慢性的な炎症状態が続くことになります。
この炎症が全身に影響する可能性がある点から、妊婦さんにおいては早産リスクとの関連が指摘されることもあり、早期の把握と対応が重要と考えられています。
早期発見の段階であれば、専門的なクリーニングやセルフケアの見直しといった負担の少ない対応で、状態の安定を目指せるケースが多くあります。
歯科検診は「治療のため」だけでなく、今の状態を知り、リスクを管理するための機会です。
妊娠中は体調の変化が大きいため、問題が小さいうちに確認しておくことで、不安を抱え込まずに済むという意味でも、早期対応には大きな意義があります。
妊娠中に行われる一般的な歯周病ケア
妊娠中の歯周病ケアは、母体と赤ちゃんへの影響に配慮しながら、無理のない範囲で行われます。
積極的な外科処置を行うことは少なく、基本となるのは検査、クリーニング、そしてセルフケアのサポートです。
歯科医院では、歯ぐきの状態や歯周ポケットの深さ、出血の有無などを確認し、歯周病の進行度を評価します。
その上で、歯垢や歯石を除去するクリーニングを行い、炎症の原因となる細菌の量を減らしていきます。
妊娠中は体調に波があるため、診療時間を短くしたり、姿勢に配慮したりするなど、個々の状況に応じた対応が取られます。
また、必要に応じて歯みがき方法の調整や、つわりがある方でも取り入れやすいケアの工夫が提案されることもあります。
こうした予防的な歯周病ケアは、妊娠中のリスク管理の一環として、無理なく継続できる形で進められる点が特徴です。
日常生活でできる予防の基本
歯周病の予防は、特別なことをしなければならないわけではなく、日常生活の中で積み重ねる基本的なケアが中心になります。
妊婦さんの場合、「完璧に行うこと」よりも、「続けられること」を重視することが大切です。
歯みがきは、体調の良い時間帯を選び、短時間でも丁寧に行うことを意識しましょう。
つわりが強い場合は、ヘッドの小さい歯ブラシを使う、香味の少ない歯みがき粉に変えるなどの工夫も有効です。
また、歯ぐきからの出血や腫れ、口臭の変化といったサインに気づいたら、自己判断で放置せず、歯科医師に相談することが予防につながります。
食後に口をゆすぐ、水分補給を意識するなど、簡単な習慣も口腔内環境の安定に役立ちます。
妊娠中の歯周病予防は、早産リスクを下げるためだけでなく、出産後の忙しい時期を見据えた健康管理の土台づくりでもあります。
無理のない範囲でできることを積み重ねることが、安心につながります。
妊娠中の歯科検診で得られるメリット
お口の状態を客観的に把握できる安心感
妊娠中は体調や生活リズムの変化が大きく、口の中の異変に気づきにくくなることがあります。
歯ぐきからの出血や腫れがあっても、「妊娠中だから仕方がない」と判断してしまい、不安を抱えたまま過ごしている方も少なくありません。
歯科検診を受けることで、虫歯や歯周病の有無、炎症の程度などを専門的な視点で確認してもらうことができます。
自分では分かりにくい状態を客観的に評価してもらえることは、大きな安心感につながります。
特に妊婦さんの場合、歯周病は自覚症状が乏しいまま進行することがあり、知らないうちにリスクを抱えているケースもあります。
検診によって「問題がない」「軽度で管理できる」「注意が必要」といった現状が整理されることで、過度に心配する必要がなくなり、必要な対策だけに集中できるようになります。
不安を曖昧なまま抱えるのではなく、専門家の判断をもとに現状を知ることが、妊娠期を安心して過ごすための土台となります。
出産後のトラブル予防につながる視点
出産後は育児に追われ、自分の通院やセルフケアの時間を確保することが難しくなりがちです。
そのため、妊娠中に口腔内の状態を整えておくことは、出産後のトラブル予防という観点からも重要です。
歯周病や虫歯が進行した状態で出産を迎えると、痛みや腫れが出た際にすぐに受診できず、症状が悪化してしまうこともあります。
妊娠中の歯科検診は、こうした事態を避けるための準備期間と捉えることができます。
また、歯周病は慢性的な炎症疾患であり、妊婦さんでは早産リスクとの関連が指摘されることもあります。
妊娠中に歯周病の有無や進行度を把握し、予防や管理を行っておくことは、妊娠期だけでなく産後の健康管理にもつながります。
「今は困っていないから大丈夫」ではなく、「忙しくなる前に整えておく」という視点が、結果的に負担を減らすことにつながります。
母親自身の健康管理としての意義
妊娠中の歯科検診は、お腹の赤ちゃんのためだけのものではありません。
母親自身の健康を守るための大切な一環でもあります。
歯周病は口の中だけの問題ではなく、全身の炎症状態と関わる疾患です。
妊婦さんではホルモンバランスの影響で歯周病が悪化しやすく、体調不良や不快感の原因になることもあります。
口の中の状態が安定することで、食事がしやすくなり、栄養摂取や日常生活の質の維持にもつながります。
これは、妊娠期間を無理なく過ごすための重要な要素です。
また、「自分の健康を後回しにしてしまう」という妊娠期特有の心理に対して、検診は立ち止まって自分の体を見つめ直す機会にもなります。
妊娠中の歯科検診は、歯周病や早産リスクの予防だけでなく、母親自身が安心して妊娠期を過ごすための健康管理の一部として、前向きに考える価値があります。
受診前に知っておきたい準備と伝え方
予約時に伝えておくべき妊娠情報
妊娠中に歯科を受診する際は、予約の段階で妊娠していることを必ず伝えておくことが大切です。
あわせて、妊娠週数や出産予定日が分かれば伝えておくと、歯科医院側が診療内容や時間配分を検討しやすくなります。
また、つわりの有無や、仰向けの姿勢がつらいかどうか、過去に体調を崩した経験があるかなども重要な情報です。
これらは治療の可否を判断するためではなく、安全で負担の少ない診療計画を立てるために活用されます。
歯周病や歯ぐきの出血など、現在気になっている症状があれば、あらかじめ伝えておくことで、検診の目的が明確になります。
「妊婦だから迷惑になるのでは」と遠慮する必要はなく、正確な情報共有が、安心して受診するための第一歩になります。
体調が不安定な日の受診判断
妊娠中は日によって体調の波が大きく、「予約したけれど今日はつらい」と感じることも珍しくありません。
その場合、無理をして受診することが最善とは限らないこともあります。
強いつわり、めまい、腹部の張り、発熱などがある日は、まずは体調を優先する判断が大切です。
歯科検診は緊急性が低いケースも多いため、体調が落ち着いてから受診を調整することが可能です。
一方で、歯ぐきの強い腫れや痛み、出血が続くなど、気になる症状がある場合は、電話で相談することで対応を検討してもらえます。
妊婦さんの受診では「予定通り行くか」「延期するか」を二択で考える必要はなく、相談しながら判断する姿勢が重要です。
体調に合わせて柔軟に対応できるよう、歯科医院とのコミュニケーションを大切にしましょう。
母子手帳や服装などの実務的なポイント
妊娠中の歯科受診では、母子手帳を持参すると役立つ場合があります。
妊娠週数や経過を確認する際の参考になることがあり、必要に応じて歯科医師が状況を把握しやすくなります。
服装については、お腹を締め付けない楽な服装がおすすめです。
診療中は仰向けになる時間があるため、ゆったりとしたワンピースやゴムウエストのボトムスなどが安心です。
また、体温調節がしやすいように羽織ものを持参したり、診療中に気分が悪くなった際にすぐ伝えられるよう、遠慮せず声をかける心構えも大切です。
歯科検診は「頑張って受けるもの」ではなく、体調を最優先に進めるものです。
こうした実務的な準備を知っておくことで、妊娠中の歯科受診はより安心できるものになります。
妊娠中の歯科受診に関するよくある質問
レントゲンや薬の使用は大丈夫なのか
妊娠中の歯科受診で特に不安に感じやすいのが、レントゲン撮影や薬の使用についてです。
結論から言えば、これらは「必要性を慎重に判断した上で」行われます。
歯科用レントゲンは照射範囲が口の周囲に限られており、腹部からは離れています。
撮影が必要な場合には、防護用エプロンを使用するなど、妊婦さんへの影響を最小限に抑える配慮が行われます。
ただし、妊娠中は不要な検査を避けることが基本であり、緊急性や診断上の必要性を歯科医師が慎重に判断します。
薬についても同様で、妊娠中に使用できるもの・避けるべきものを考慮した上で選択されます。
歯周病の管理や痛みの緩和においても、必要以上に薬を使うことはなく、使用する場合は安全性を重視した対応が取られます。
不安がある場合は、「使用の必要性」「代替手段の有無」について説明を受けた上で判断することが大切です。
痛みがある場合はどうすればよいか
妊娠中に歯の痛みや歯ぐきの強い腫れを感じた場合、「我慢すべきか」「受診してよいのか」と迷う方は多いものです。
しかし、強い痛みや炎症がある場合は、放置することで体への負担が大きくなることもあります。
歯周病が進行している場合や、虫歯による痛みがある場合、炎症が続くこと自体がストレスとなり、体調に影響する可能性も考えられます。
このようなケースでは、妊娠週数や体調を考慮しながら、症状を和らげるための対応が検討されます。
必ずしもすぐに本格的な治療を行うとは限らず、応急的な処置やクリーニング、生活上のアドバイスによって痛みを軽減する方法が選ばれることもあります。
「妊娠中だから痛みは我慢するしかない」と考えず、まずは歯科医院に相談することが重要です。
相談することで、今できること・様子を見ることを整理でき、不安を抱え込まずに済みます。
産後まで待つべきケースとそうでないケース
妊娠中の歯科受診では、「今対応した方がよいこと」と「産後まで待ってもよいこと」を分けて考えることが基本です。
すべての治療を妊娠中に行う必要はなく、状況に応じた判断が行われます。
例えば、歯周病のチェックやクリーニング、セルフケア指導といった予防的な対応は、妊娠中でも行われることが多いものです。
これらは早産リスクの管理や、妊娠期の口腔内環境の安定に役立ちます。
一方で、緊急性が低く、長時間の処置が必要な治療については、産後に回す選択がされることもあります。
大切なのは、「すべて待つ」「すべて行う」と極端に考えないことです。
歯科医師と相談しながら、妊婦さん自身の体調や妊娠週数を踏まえて優先順位を決めることで、無理のない受診計画を立てることができます。
この柔軟な考え方が、妊娠中の歯科受診への不安を軽減するポイントになります。
出産後とその先を見据えた口腔ケア
出産後に起こりやすいお口のトラブル
出産後は、ホルモンバランスの急激な変化や睡眠不足、生活リズムの乱れによって、口腔内の環境が不安定になりやすい時期です。
妊娠中に見られた歯ぐきの腫れや出血が完全に落ち着かないまま、歯周病が進行してしまうケースもあります。
また、授乳や育児によって自分のケアにかける時間が減り、歯みがきが不十分になることで、虫歯や歯周病のリスクが高まることも少なくありません。
特に歯周病は、痛みが出にくいため気づいたときには進行していることがあります。
妊婦さんの歯周病は、出産後もそのまま引き継がれる可能性があるため、妊娠期からの管理が重要です。
出産後に起こりやすいトラブルを理解しておくことで、「時間ができてから」ではなく、「悪化する前に」対処する意識を持ちやすくなります。
育児期に向けた通院・ケアの考え方
育児が始まると、通院のハードルは一気に高くなります。
赤ちゃん中心の生活の中で、自分の歯科受診を後回しにしてしまう方は多いのが現実です。
そのため、妊娠中から「育児期を見据えた通院・ケア」を考えておくことが大切です。
歯科検診で歯周病や虫歯のリスクを把握し、今後どのタイミングで受診すればよいかを歯科医師と相談しておくことで、無理のない計画が立てやすくなります。
育児期のケアは、完璧を目指す必要はありません。
短時間でも続けられるセルフケアや、間隔をあけた定期的なチェックなど、現実的な方法を選ぶことが継続のポイントです。
妊婦さんの時期から予防の意識を持つことは、出産後の負担を軽減し、安心して育児に向き合う土台づくりにつながります。
赤ちゃんと家族の健康につながる視点
母親の口腔内の健康は、赤ちゃんや家族の健康とも無関係ではありません。
虫歯や歯周病の原因となる細菌は、日常生活の中で家族間に伝播する可能性があると考えられています。
出産後は、スキンシップや食事の共有が増え、赤ちゃんと密接に関わる時間が長くなります。
そのため、母親自身の口腔内環境を整えておくことは、赤ちゃんの健やかな成長を支える一因になります。
また、母親が定期的な歯科受診やセルフケアを実践する姿は、家族全体の健康意識にも影響を与えます。
妊娠中の歯周病予防や口腔ケアは、早産リスクへの配慮だけでなく、将来的な家族の健康管理への第一歩ともいえるでしょう。
出産後とその先を見据え、今できる範囲で口腔ケアを続けていくことが、長い目で見た安心につながります。
妊娠中だからこそ、歯科医師に相談するという選択
不安を一人で抱え込まないために
妊娠中は、体調の変化や将来への心配が重なり、さまざまな不安を抱えやすい時期です。
歯ぐきからの出血や腫れがあっても、「この程度で相談していいのだろうか」「妊娠中に歯医者に行くのは控えるべきでは」と迷い、誰にも相談できずに抱え込んでしまう方も少なくありません。
しかし、妊婦さんにとっての歯周病や口腔内トラブルは、決して珍しいものではなく、多くの方が同じような悩みを経験しています。
不安を一人で抱えたまま過ごすことは、精神的な負担になるだけでなく、結果的に受診のタイミングを逃してしまう原因にもなります。
歯科医師に相談することは、「治療を受ける覚悟を決めること」ではなく、「今の状態を一緒に確認してもらうこと」です。
小さな疑問や不安の段階で相談することで、安心できる情報を得られ、気持ちが軽くなるケースも多くあります。
正確な情報を専門家から得る意義
妊娠中の歯科受診については、インターネットや周囲の体験談など、さまざまな情報があふれています。
その中には、不安を必要以上に強めてしまう内容や、現在の医療とは異なる考え方が含まれていることもあります。
歯科医師に相談する意義は、妊婦さん一人ひとりの状況に合わせた、正確で現実的な情報を得られる点にあります。
妊娠週数、体調、歯周病の状態などを踏まえた上で、「今できること」「様子を見てよいこと」を整理してもらえることは、大きな安心材料になります。
特に、妊婦さんの歯周病や早産リスクについては、「怖い話」としてではなく、「予防や管理が可能なリスク」として理解することが重要です。
専門家から説明を受けることで、漠然とした不安が具体的な対策に変わり、前向きな判断がしやすくなります。
安心して妊娠期間を過ごすための第一歩
妊娠中の歯科相談は、何か問題が起きてから行くものではありません。
「気になることがある」「少し不安を感じている」という段階で相談すること自体が、安心して妊娠期間を過ごすための第一歩になります。
歯科検診や相談を通じて、歯周病の有無やリスクを把握し、必要に応じた予防を行うことは、妊婦さん自身の健康管理につながります。
それは結果として、妊娠期間中の不安を減らし、心身の負担を軽くすることにもつながります。
妊娠中だからこそ、無理をせず、専門家の力を借りながら体と向き合う選択が大切です。
歯科医師への相談は特別な行動ではなく、安心して日々を過ごすための自然な選択肢のひとつとして、前向きに考えてみてください。
監修:愛育クリニック麻布歯科ユニット
所在地〒:東京都港区南麻布5丁目6-8 総合母子保健センター愛育クリニック
電話番号☎:03-3473-8243
*監修者
愛育クリニック麻布歯科ユニット
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
・日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
・東京都式根島歯科診療所 勤務
・長崎県澤本歯科医院 勤務
・医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
・愛育クリニック麻布歯科ユニット 開設
・愛育幼稚園 校医
・愛育養護学校 校医
・青山一丁目麻布歯科 開設
・区立西麻布保育園 園医
*所属
・日本歯科医師会
・東京都歯科医師会
・東京都港区麻布赤坂歯科医師会
・日本歯周病学会
・日本小児歯科学会
・日本歯科審美学会
・日本口腔インプラント学会
カテゴリー:コラム 投稿日:2025年12月15日