妊娠中の虫歯治療、出産前にどこまでできる?安定期の受診と治療の目安
目次
「産むまで我慢するしかない」と思っていませんか

奥歯がしみ始めた妊娠20週の不安
冷たい水で奥歯がしみるようになったという変化は、虫歯が象牙質(歯の表面のエナメル質の内側にある層)まで達しているサインとして現れることがあります。妊娠前から「なんとなく気になっていた」程度だった歯が、妊娠中期に入って急に自覚症状を出し始めるケースは珍しくありません。
妊娠中は体調の波が大きく、歯の痛みを他の不調と切り分けて考えにくい時期でもあります。「つわりのせいかもしれない」「ホルモンの影響で一時的なものだろう」と解釈し、受診を後回しにしてしまう方も多いのではないでしょうか。
しみる症状は、痛みの強さと虫歯の深さが必ずしも一致しません。強くしみるのに浅い場合もあれば、鈍い違和感なのに神経の近くまで進んでいる場合もあります。この判断は見た目だけでは難しく、状態を正確に把握するには歯科での確認が必要になります。
産休・里帰りで通院が途切れる心配
妊娠中の虫歯治療で最も現実的な制約になるのは、体への負担よりも「通院できる期間が限られている」という時間の問題です。産休に入るタイミング、里帰りの時期、出産予定日という3つの区切りがあり、そこから逆算すると通院に使える週数は思っているより短くなります。
働きながら妊婦健診にも通う中で、歯科の予約枠をどう確保するか悩む方は少なくありません。港区や麻布周辺にお住まいで日中お勤めの場合、平日の限られた時間をどう配分するかは切実な課題と言えるでしょう。
里帰り先で歯科を新しく探すとなると、状態の説明からやり直すことになります。今の担当医が把握している情報を引き継げないまま出産を迎えると、産後に一から検査を受け直す流れになりやすい点も、事前に知っておきたいところです。
我慢を選ぶ前に確かめたいこと
「産むまで我慢する」という選択をする前に確認しておきたいのは、今の虫歯が我慢できる段階なのか、それとも出産までに進む可能性がある段階なのかという点です。この見極めができていない状態での我慢は、痛みが強まったときに応急処置しか選べない状況を招くことがあります。
妊娠中でも、体調が落ち着いている安定期であれば一般的な虫歯治療を進められる場合があります。当院ではマタニティ歯科として妊娠中の歯科検診や虫歯・歯周病の治療に対応しており、週数と体調を踏まえて進め方をご提案しています。
まず現状を診てもらい、「出産までに終えられる範囲」と「産後に回すべき範囲」を線引きしてもらうこと。これが分かるだけで、我慢するかどうかの判断材料が具体的になります。診察では歯の状態に加えて、産休までの残り週数や里帰りの予定も含めた通院計画を一緒に組み立てていくことができます。
妊娠中に虫歯が進みやすくなる体の変化

つわりで歯みがきが続かなくなる時期
妊娠中に虫歯が進みやすくなる大きな要因のひとつが、つわりによって歯みがきの質と回数が落ちることです。歯ブラシを口の奥に入れると吐き気が誘発されるため、奥歯の外側や後ろ側だけ磨き残しが積み重なる、という状態が起こりやすくなります。妊娠前から気になっていた奥歯がこの時期に一気に進むのは、こうした背景があるためと考えられます。
つわりが軽くなってケアを再開しても、数週間分の汚れが停滞した部位はすでに脱灰(歯の表面からミネラルが溶け出す変化)が進んでいることがあります。ご自身では「また磨けるようになったから大丈夫」と感じても、歯と歯の間や被せ物の縁など見えない部分で虫歯が広がっているケースは少なくありません。
体調に波がある時期は、無理に長時間磨くより、ヘッドの小さい歯ブラシで前かがみの姿勢を取り、うがいを増やすだけでも口の中の環境は変わります。奥歯にしみる感覚が出てきた段階では、すでに象牙質まで達している可能性があり、セルフケアだけで戻すことは難しくなります。
食事回数の増加と口の中の酸性化
食べる回数が増えること自体が、虫歯のリスクを押し上げます。食事や間食のたびに口の中は酸性に傾き、歯の表面が溶けやすい状態になります。通常は唾液の働きで数十分かけて中性へ戻り、溶け出したミネラルが再び歯に戻る再石灰化が起こります。ところが少量ずつ何度も食べる「分割食」が続くと、この回復の時間が確保されにくくなるのです。
妊娠中はつわりで一度に多く食べられなかったり、空腹で気持ち悪くなるのを避けるために飴やビスケットを常備したりする方が多くいらっしゃいます。飴やスポーツドリンクのように口の中に長くとどまるものは、酸性の時間をさらに引き延ばす傾向があります。
食事の回数を減らすことが難しい時期だからこそ、食べ終わりに水やお茶で口をゆすぐ、だらだらと食べ続けず区切りをつける、といった調整で酸性に傾く時間の合計を短くできます。すでにしみる症状が出ている歯では、この酸性環境が刺激そのものを強め、冷たい飲み物に反応しやすくなることもあります。
女性ホルモンが歯ぐきに与える影響
妊娠中の歯ぐきの腫れや出血は、女性ホルモンの増加が関係していることが知られています。エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンは血液を通じて歯ぐきの溝にも届き、特定の歯周病菌が増えやすい環境をつくると考えられています。歯みがきの状態が以前と変わらなくても、歯ぐきが赤く腫れ、フロスで血がにじむようになるのはこのためです。
歯ぐきが腫れると歯と歯ぐきの境目にすき間ができ、そこに汚れが入り込みます。出血が怖くてブラシを当てられなくなると、汚れがさらに停滞し、歯の根元側から虫歯が始まることもあります。虫歯と歯ぐきのトラブルは別々の問題に見えて、実際には同じ場所で連動して進むという見方ができます。
「妊娠中の歯ぐきの腫れは出産すれば戻る」と聞いて様子を見る方もいらっしゃいますが、炎症が長引いた部分では歯を支える組織にダメージが残る場合があります。当院では妊娠中の歯科検診で歯ぐきの状態と虫歯の進行を合わせて確認し、その時期に無理なくできるクリーニングやブラッシングの調整をご案内しています。
妊娠週数で変わる、治療できる範囲

妊娠初期に応急処置を優先する理由
妊娠初期(およそ15週まで)は、痛みや腫れを抑える応急的な処置に絞り、本格的な治療は先送りする判断が一般的です。この時期は胎児の器官が形づくられる大切な段階であり、母体側もつわりで体調が揺れやすくなります。長時間口を開けたままの姿勢を保つこと自体が負担になる場合もあるでしょう。
とはいえ「初期だから何もできない」という意味ではありません。強い痛みを我慢し続けると食事や睡眠に影響が及び、それが体調そのものを崩す要因になり得ます。痛みの原因を一時的に抑える薬を詰める処置や、汚れを取り除いて炎症を鎮める処置は、初期でも検討される範囲に入ります。
妊娠がわかった段階で口の中を一度確認しておくと、この後どの時期に何を進めるかという見通しが立ちます。虫歯の位置と深さを把握しておくだけでも、症状が出たときの対応が早くなるという利点があります。
安定期に一般的な治療を進めやすい背景
安定期と呼ばれる妊娠16週から27週前後は、虫歯を削って詰める、神経の処置を行うといった一般的な治療を進めやすい時期にあたります。つわりが落ち着いて食事や体調が安定し、おなかの大きさもまだ診療台に横になる姿勢を大きく妨げない段階だからです。当院でも、妊娠安定期には通常の虫歯・歯周病治療に対応しています。
妊娠20週前後で奥歯がしみている方の場合、この時期は治療の選択肢が最も広く取れるタイミングと言えるでしょう。削って詰める処置なら1〜2回で区切りがつくケースもあり、神経に近い深い虫歯でも段階を踏んで進められる余地があります。
ただし週数だけで機械的に決まるわけではありません。その日の体調や過去の妊娠経過、産科での指示内容によって進め方は変わります。安定期に入ったからといって一気に詰め込むのではなく、1回あたりの負担を見ながら順序を決めていくのが実際の進め方です。
妊娠後期は予防と応急処置が中心になる
妊娠28週以降の後期は、クリーニングやフッ素塗布などの予防処置と、必要に応じた応急処置が中心となります。おなかが大きくなると仰向けの姿勢で血圧が下がりやすくなり、長く同じ体勢を保つことが難しくなるためです。当院では後期の方に対して、予防処置と必要な応急対応という形でお口の状態を維持する方針を取っています。
この時期は座り気味の姿勢に調整したり、こまめに体勢を変えたりといった配慮が前提になります。処置内容そのものを絞ることで、1回の来院時間を短く保つ狙いもあります。
逆算すると、削って詰めるところまで終えたい処置は安定期のうちに着手しておく必要があるということになります。産休や里帰りの予定が決まっている方は、その日程を先に伝えておくと、後期に持ち越す部分と安定期に片づける部分の線引きがはっきりします。港区・麻布周辺で通院を続けられる期間がいつまでかを共有しておくことが、計画を立てる出発点になります。
「しみる」が示す虫歯の進行段階を読み解く

冷たいものだけしみるC1〜C2の状態
冷たいものを口に含んだ瞬間だけしみて、すぐに感覚が消える場合、虫歯はC1からC2の範囲にとどまっていることが多いとされています。C1はエナメル質に穴が空き始めた段階で、しみる感覚はまだ出にくい状態。C2は象牙質まで穴が達し、外からの刺激が神経に伝わりやすくなった段階と考えられます。
妊娠20週前後で「奥歯が冷たい水にしみる」と気づく方の多くは、このC2に相当する範囲で相談に来られます。C2までであれば、虫歯の部分を取り除いて詰める処置で区切りをつけられる可能性があり、通院回数も比較的少なく収まりやすい傾向があります。
安定期の治療で対応しやすいのは、まさにこの段階です。しみる時間が「一瞬」なのか「しばらく続く」のかは、進行度を推し量る手がかりになります。受診時に伝えておくと診断の助けになる情報です。
何もしなくても痛むC3で起きていること
何もしていないのにズキズキ痛む、温かい飲み物でしみる、夜になると痛みが強まる。こうした変化は、虫歯が歯の神経(歯髄)にまで達したC3の可能性を示すサインです。細菌が神経に届くと内部で炎症が起こり、逃げ場のない空間で圧力が高まるため、拍動するような痛みとして感じられます。
C3になると、感染した神経を取り除く処置が必要になり、消毒や被せ物まで含めて通院回数が増えていきます。妊娠中の体で複数回の通院を重ねるのは負担が大きく、産休や里帰りの時期と重なると途中で止まってしまう心配も出てきます。
痛みが一度おさまったからといって治ったわけではありません。神経が働きを失うと痛みの信号自体が届かなくなり、内部では感染が静かに広がっていくことがあります。「痛みが消えたから様子を見よう」という判断が、後の処置を複雑にする場面は少なくありません。
放置すると出産後の治療が長くなる理由
今の段階で詰めるだけで済む虫歯も、数か月放置すれば神経の処置が必要な段階へ移ることがあります。処置の内容が変われば通院回数も変わり、1回で終わる予定だった治療が、4回、5回と積み重なる形になっていきます。
産後は授乳や夜間の対応が続き、まとまった時間を確保しにくい時期です。「生まれてから治せばいい」と考えていたのに、実際には赤ちゃんを預ける段取りから調整が必要になり、受診が先送りになる方も多くいらっしゃいます。その間にも口の中の状態は変化していきます。
安定期の今なら、比較的体調が落ち着いた状態で処置を進めやすい時期にあたります。当院では妊娠中の虫歯治療について、週数や体調を確認しながら進め方を組み立てています。しみる症状が出ている歯がどの段階にあるかは、レントゲンと視診で確認することで、産休前にどこまで終えられるかの見通しが立てられます。
歯科医が妊娠中の治療可否を判断する基準

体調・血圧・つわりの落ち着き具合
妊娠中の虫歯治療を進めるかどうかは、週数だけでなく「その日の体調が診療チェアで安定して過ごせる状態か」で判断します。安定期に入っていても、つわりの症状が残っていたり、めまいや動悸が続いていたりする場合は、処置内容を軽いものに切り替える判断をすることがあります。
問診では、血圧の経過、貧血の指摘の有無、切迫早産などで産科から安静の指示が出ていないか、といった点を確認します。妊娠中は血圧の変動が起こりやすく、体調の波も個人差が大きいためです。
「予約したのに、その日は気分がすぐれない」という状況は珍しくありません。無理に予定どおり進めるより、その日は口の中の状態確認とクリーニングだけにして、削る処置を次回に回すほうが結果的に通院が続きます。体調の申告は治療計画を組み替えるための材料であり、遠慮していただく必要はありません。
治療1回あたりの時間と姿勢の負担
妊娠中は1回の治療時間と診療チェアの姿勢が、可否判断の大きな要素になります。お腹が大きくなる時期に仰向けの姿勢を長く続けると、子宮が背中側の太い血管を圧迫し、血圧が下がって気分が悪くなることが知られています。仰向けで気分不良が出やすい方には、背もたれを起こした姿勢や、体を少し左側に傾けた体勢で処置を行う方法がとられます。
そのため、1回の処置は短めに区切り、複数回に分けて進める組み立てが基本になります。長時間かけて一気に仕上げるより、削って詰めるまでを分割したほうが、体への負担は明らかに軽くなります。
「回数が増えると産休前に終わらないのでは」と心配される方もいらっしゃいます。1回の所要時間と体調の許容範囲を最初に把握しておけば、残り週数から現実的な回数を逆算でき、どこまで進めるかの見通しが立てやすくなるという見方ができます。
産科主治医との情報共有が要る場面
産科の主治医に確認をとるのは、全身状態や妊娠経過に注意が必要な場合です。切迫早産や妊娠高血圧症候群の指摘がある方、多胎妊娠の方、既往症でお薬を服用中の方などは、歯科処置を進める前に妊娠経過の情報を共有したうえで方針を決めます。腫れや痛みが強く、痛み止めや抗菌薬の使用を検討する場面でも、産科と足並みをそろえた判断が求められます。
当院は総合母子保健センター愛育クリニックの中にある歯科部門として、妊娠中の検診や虫歯・歯周病の治療に対応しています。港区・麻布周辺で妊婦健診と歯科を別々に組んでいる方からは、体調や妊娠経過を前提に相談できる点を安心材料として挙げていただくことがあります。
母子健康手帳に記載された妊娠経過や産科からの指示内容を診察時にお持ちいただくと、確認の手間が減り、その日のうちに進められる処置の範囲がはっきりします。
エックス線・麻酔・お薬への不安をどう考えるか

防護と部位で考える歯科エックス線
歯科のエックス線撮影で不安を感じる方に知っていただきたいのは、撮影する部位とお腹の距離、そして防護の有無という2つの条件で考えるという点です。歯や顎の撮影では照射範囲が口元に限られており、お腹から離れた位置に向けて撮影が行われます。防護用のエプロンを用いることで、腹部への影響をさらに抑える配慮が可能になります。
当院ではデジタルエックス線写真撮影装置を用いており、必要に応じてCT・レントゲンによる確認も行っています。デジタル方式では従来のフィルム式に比べ、少ない線量で画像を得られる特性が知られています。
「そもそも撮らずに治療できないのか」と考える方もいらっしゃいます。しみる奥歯の場合、詰め物の下や歯と歯の間の状態は目視だけでは把握しきれず、削る範囲や神経(歯髄)までの距離を見誤る可能性があります。撮影するかどうかは、得られる情報と妊娠中の状況を照らし合わせ、患者さんに説明したうえで判断していきます。
局所麻酔を使う判断と使わない判断
妊娠中の虫歯治療で局所麻酔を使うかどうかは、痛みを我慢することによる体の負担と、麻酔を使うことの負担を比べて決めていきます。歯科で用いる局所麻酔は処置する歯の周囲だけに作用し、使用する量もごく少量に留まります。安定期の治療では、必要と判断された場合に局所麻酔を用いることが一般的です。
むしろ避けたいのは、痛みをこらえながら長時間口を開け続ける状況です。痛みによる緊張や血圧の変動は、お母さんにとっても楽な状態とは言えません。麻酔で痛みを抑えたほうが、体に無理をかけずに処置を終えられる場合があります。
一方で、エナメル質のごく浅い範囲を整えるだけの処置や、汚れを取り除く処置では麻酔を使わずに済むこともあります。当院では妊娠中のエックス線、抗生物質、局所麻酔について事前にご説明し、ご希望や不安を伺いながら方針を決めています。痛みや薬に不安が強い場合、その日は診断と応急的な対応に留める組み方も選べます。
痛みを抑える工夫で麻酔量を減らす
麻酔そのものへの不安は、注射の痛みを減らす工夫によって和らげられる部分があります。当院では表面麻酔を用いて針を刺す瞬間の刺激を抑え、麻酔液は体温に近い状態に温めてから使用しています。冷たい薬液をそのまま注入すると、温度差が刺激として感じられやすくなるためです。
注入時には33ゲージという細い注射針と電動注入器を用い、少量ずつ一定の速度で薬液を進めていきます。急な圧力がかかると組織が押し広げられて痛みにつながるため、速度を一定に保つことが刺激の軽減に結びつきます。麻酔が効くまで時間を置いてから処置に入ることで、追加の麻酔を重ねる必要が生じにくくなります。
結果として、少ない量で十分に痛みを抑えられれば、妊娠中の体への負担も抑えられるという流れになります。「注射が苦手で歯科を避けてきた」という方は、どの段階が不安なのかを事前に伝えていただくと、表面麻酔の時間配分や声かけのタイミングを調整しながら進められます。
産休前に何回通うか、逆算で組む通院計画

安定期に終えたい処置の優先順位
産休前の限られた期間で優先されるのは、痛みや感染のリスクが高い歯から順に手をつけるという考え方です。しみる症状が出ている奥歯のように、神経(歯髄)に近いところまで進んだ虫歯は、放っておくと妊娠後期に痛みが強まりやすい部位にあたります。こうした歯を先に処置し、経過観察でも大きく変わらない小さな脱灰は後回しにする組み立てが現実的でしょう。
優先順位は、症状の強さだけで決まるものではありません。噛み合わせで力がかかる歯か、詰め物が欠けて食べ物が詰まりやすい状態か、歯ぐきの炎症を伴っているかといった要素も判断に含まれます。当院では虫歯の進行段階に応じた治療とあわせて、歯石除去やブラッシング指導といった予防的な処置も組み合わせています。
妊娠20週前後で相談を始めると、体調を見ながら数回に分けて通う余裕が生まれます。逆に産休直前になってから駆け込むと、1回の処置時間が長くなり、体への負担が増える方向に働きます。
里帰り前に区切りをつける詰め物の考え方
里帰り出産を予定している場合、「途中で終わらせない」ことが計画の軸になります。虫歯を削ったまま仮の詰め物で数か月過ごすと、仮封材が欠けたり隙間から細菌が入り込んだりして、内部で進行が再開する可能性があります。里帰りの時期が決まっているなら、その日程を最初に伝えていただくことで、削る処置と詰める処置を同じ期間内に収める設計がしやすくなります。
詰め物の選び方も、期間の長さに影響します。1回で詰め終わる材料を使うか、型取りをして製作期間を挟むかで、必要な通院回数が変わってきます。「型取りをして次回装着」という流れは、装着日まで含めて2〜3週間程度を見込むのが一般的です。
里帰り先での通院を前提にする場合でも、どこまで進んだかが分かる状態で送り出すことが、次の担当医の判断材料になります。処置内容とエックス線の情報が整理されていれば、初診からやり直す手間を減らせるという利点があります。
出産後に持ち越す治療の準備と引き継ぎ
出産後に回す治療は、「そのまま待てる状態」に整えてから持ち越すことが前提になります。具体的には、感染源となる軟らかい虫歯の部分を取り除き、痛みが出にくい状態にしてから、産後にあらためて最終的な被せ物や詰め物へ進むという流れです。神経の処置が必要な段階まで進んでいる歯は、途中で止めると再感染につながるため、区切りの置き方を慎重に検討します。
産後は授乳や睡眠不足が重なり、自分の通院時間を確保しにくくなると感じる方が多くいらっしゃいます。だからこそ、妊娠中の段階で「産後何か月ごろに、何回の通院が残っているか」を数字として共有しておくと、復帰の計画が立てやすくなるでしょう。
当院は港区南麻布で小児歯科とマタニティ歯科の両方に対応しており、お子さんの受診と合わせてご自身の残りの治療を進めるという通い方も可能です。生後まもない時期の来院に不安がある方は、キッズスペースを備えた診療室の環境も含めて事前にご相談いただけます。
マタニティ歯科を選ぶときに見ておきたい視点

妊婦さんの体調に合わせた診療体制
マタニティ歯科を選ぶ際に最初に確認したいのは、妊娠中の体の変化に合わせて診療の進め方を調整してくれるかどうかです。同じ虫歯治療でも、妊婦さんの場合は診療台に横になる角度、1回あたりの処置時間、休憩の入れ方まで含めて設計する必要があります。この配慮があるかどうかで、通院そのものの負担が大きく変わってきます。
もう1つの視点が、痛みへの対応です。麻酔の刺激そのものが緊張や血圧上昇につながることもあるため、表面麻酔を使う、麻酔液を体温に近い温度に温める、細い注射針を用いる、電動注入器で少量ずつゆっくり注入するといった工夫が積み重ねられているかは、妊娠中の治療の受けやすさを左右します。
当院ではこうした痛みを抑えるための配慮を行いながら、妊娠中の歯科検診、虫歯や歯周病の治療に対応しています。診療室に個室を備えており、周囲を気にせず途中で体勢を変えたいと伝えられる環境も、体調が読みにくい時期には意味を持ちます。
産後・お子さんまで続けて通えるか
妊娠中に通う歯科医院を選ぶときは、出産後も同じ場所で続けられるかを合わせて考えておくと、通院計画が途切れにくくなります。安定期に区切りをつけた治療の続きは、産後に再開する形になることが少なくありません。そのとき同じ医院で経過を把握していれば、状態の説明を一からやり直す手間が省けます。
生まれてくるお子さんの受診も同じ流れで考えられます。乳歯が生え始めた時期のフッ素塗布やブラッシング指導、生え変わりの時期の噛み合わせの確認まで、家族単位で相談できる場所があると、赤ちゃんを連れての移動負担も減らせるでしょう。
愛育クリニック麻布歯科ユニットは、小児歯科とマタニティ歯科の両方に対応しており、キッズスペースを備えた診療室もご用意しています。「子どもを預ける先がないから自分の治療を後回しにする」という状況になりにくいことは、産後の口腔ケアを続けるうえで実際的な支えになります。
通いやすさが治療完了率を左右する
妊娠中の虫歯治療で最終的に結果を分けるのは、技術面よりも「予定通り最後まで通えたかどうか」であることが多いものです。詰め物や被せ物を伴う治療は複数回の来院が前提になるため、1回でも足が遠のくと、そのまま産休や里帰りの時期に入ってしまいます。仮の詰め物のまま出産を迎えると、外れや汚れの侵入といった別の心配が生じます。
そのため、職場や自宅からの動線上にあるか、体調が優れない日に予定を組み直しやすいかは、現実的な判断材料になります。港区や麻布周辺にお住まいで、平日は勤務、週末は健診という生活を送っている方であれば、平日夜や土曜に選択肢があるかどうかも通院継続に影響するでしょう。
お腹が大きくなるにつれ、移動距離そのものが負担に変わります。「通える距離かどうか」を妊娠20週の今ではなく、30週を過ぎた自分を想像して判断しておくと、後半になって通院が途切れる事態を避けやすくなります。
「治療中に気分が悪くなったら?」よくある疑問への回答

途中で中断してもらうことはできる?
治療の途中でも、手を挙げる合図ひとつでいつでも中断できます。妊娠中は仰向けの姿勢が続くと、大きくなった子宮が血管を圧迫し、血圧が下がって気分が悪くなることがあります。この変化は妊娠中期以降に起こりやすく、体の向きを少し変えるだけで和らぐことが知られています。
そのため治療前に、合図の方法と、休憩を挟むタイミングをあらかじめ決めておく進め方をとります。背もたれを起こす、体の右側にクッションを入れて少し左に傾ける、といった調整で楽になる場合が多くあります。
「途中で止めてもらうのは申し訳ない」と感じる方は少なくありませんが、無理を重ねると次回の受診自体が怖くなってしまいます。1回の処置量を最初から控えめに設定し、複数回に分けて進めるほうが、結果として産休前までに治療が完了しやすくなります。
歯ぐきの腫れや出血は治療が必要か
妊娠中の歯ぐきの腫れや出血は「よくあること」で済ませず、一度状態を確認しておきたい症状です。ホルモンの影響で歯ぐきが反応しやすくなっている場合と、歯垢の付着によって炎症が起きている場合では、必要な対応が変わります。
歯ぐきが赤く膨らんで触れると出血する、部分的にこぶ状に盛り上がっているといった変化は、妊娠中に現れることがあります。多くは出産後に落ち着いていきますが、痛みで歯みがきができなくなると、その部位の汚れがさらに溜まり、虫歯のリスクにも波及します。
当院ではスケーリングやルートプレーニングによる歯石・歯垢の除去、ブラッシング指導を通じて、炎症の原因そのものを減らす対応を行っています。妊娠中に妊娠中の歯周病治療を受けておくことは、口の中の不快感を減らすだけでなく、産後に治療をまとめて抱え込まない備えにもなります。
生まれてくる子の虫歯リスクへの影響
赤ちゃんは虫歯菌を持たずに生まれてくるため、生まれつき虫歯になりやすい体質が決まっているわけではありません。影響するのは、生後に身近な大人の口から菌が伝わる機会の多さです。お母さんの口の中に活動性の虫歯が残っていると、唾液を介した伝播の機会が増えると考えられています。
スプーンを分ける、口移しを避けるといった配慮も語られますが、日常のすべてを管理するのは現実的ではありません。妊娠中の虫歯治療で穴の開いた歯を塞ぎ、歯垢の量そのものを減らしておくほうが、無理なく続けられる対策と言えるでしょう。
当院は小児歯科とマタニティ歯科の両方に対応しており、生まれたお子さんのフッ素塗布やシーラント、生え変わり期の相談まで同じ場所で続けられます。今の治療が、数年先のお子さんの通院のしやすさにもつながっていきます。
出産までの時間を、後悔しない使い方に

この記事で押さえておきたい要点
妊娠中の虫歯治療は「出産まで我慢するもの」ではなく、週数と体調に応じて進められる範囲が変わるもの、という理解が出発点になります。安定期は一般的な治療を組み立てやすい時期とされ、妊娠後期に入ると予防処置や応急的な対応が中心になっていきます。
奥歯がしみるという症状は、歯の内部で進行が始まっているサインであることが少なくありません。冷たいものに反応する段階と、何もしなくてもズキズキする段階では、必要な処置の規模も通院回数も変わってきます。
産休や里帰りで通院が途切れる予定があるなら、逆算した通院計画を早めに立てておくことで、途中まで進めて中断するという状況を避けやすくなります。エックス線、局所麻酔、お薬については、部位や量、必要性を踏まえて歯科医師が判断し、事前に説明を受けたうえで進めるのが一般的です。
妊婦さんに向き合う当院の診療姿勢
当院は「全ての患者さんを“家族”と想う」という考えのもと、妊娠中の方から生まれてくるお子さままで、続けて関わっていける診療体制を大切にしています。マタニティ歯科として、妊娠中の歯科検診、虫歯や歯周病の治療、安定期の一般的な治療、妊娠後期の予防処置や必要に応じた応急処置に対応しています。
治療の痛みへの不安が強い方に向けては、表面麻酔の使用、体温に近い温度に調整した麻酔液、33ゲージの細い注射針、電動注入器によるゆっくりとした注入といった配慮を重ねています。麻酔が十分に効いてから処置に入ることで、体への負担を抑える工夫にもつながります。
エックス線撮影が必要な場面ではデジタルエックス線写真撮影装置を用い、必要性と方法についてご説明したうえで進めます。妊娠中のエックス線、抗生物質、局所麻酔に関する疑問は、遠慮なく口に出していただいて構いません。
しみる症状が続いている方へ
しみる感覚が数週間続いている場合、その歯は自然に元へ戻ることはなく、経過を見ているあいだに処置の規模が広がることがあります。妊娠20週前後という時期は、通院スケジュールを組み立てるうえで選択肢を確保しやすいタイミングと言えるでしょう。
「産休までに何回通えばよいのか」「里帰り前にどこまで区切りをつけられるのか」といった見通しは、実際にお口の中を診て、体調を伺ったうえでなければ具体的に出せません。逆に言えば、一度診察を受けておくだけで、残りの妊娠期間の使い方がかなり整理されます。
港区南麻布・広尾・麻布十番周辺で妊娠中の虫歯治療について相談先をお探しの方、産科の主治医と連携しながら進めたい方は、愛育クリニック麻布歯科ユニットにご相談ください。産後もお子さまと一緒に通える場所として、長くお付き合いいただければと思います。
監修:愛育クリニック麻布歯科ユニット
所在地〒:東京都港区南麻布5丁目6-8 総合母子保健センター愛育クリニック
電話番号☎:03-3473-8243
*監修者
愛育クリニック麻布歯科ユニット
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
・日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
・東京都式根島歯科診療所 勤務
・長崎県澤本歯科医院 勤務
・医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
・愛育クリニック麻布歯科ユニット 開設
・愛育幼稚園 校医
・愛育養護学校 校医
・青山一丁目麻布歯科 開設
・区立西麻布保育園 園医
*所属
・日本歯科医師会
・東京都歯科医師会
・東京都港区麻布赤坂歯科医師会
・日本歯周病学会
・日本小児歯科学会
・日本歯科審美学会
・日本口腔インプラント学会
カテゴリー:コラム 投稿日:2026年9月25日