歯周病で「何本も抜歯が必要」と言われたら?歯を残せるか判断するポイント
目次
「何本も抜きましょう」と言われ、決めきれずにいませんか

「全部抜く前提」の説明に感じた違和感
抜歯を勧められた説明に納得できないと感じるのは、判断の根拠が十分に共有されていないときに起こりやすい反応です。「歯周病が進んでいるので、この辺りは何本か抜きましょう」とだけ伝えられた場合、どの歯がどんな状態でその結論に至ったのかが見えません。人は理由の分からない決定を受け入れにくいものです。
特に、まだ普通に噛めている歯まで抜歯の対象に含まれていると、違和感はさらに強まります。ぐらついていない歯がなぜ抜歯対象なのか、その歯を支える骨がどこまで残っているのか。この2点が示されないまま本数だけが提示されると、患者さんの側には「本当にそこまで必要なのか」という疑問だけが残ります。
実際には、重度歯周病の診断では見た目やぐらつきだけでなく、レントゲンで確認できる骨の状態が判断を大きく左右します。説明に納得できないという感覚は、その情報がまだ手元にないというサインでもあると言えるでしょう。
抜歯の本数だけが独り歩きしてしまう理由
「歯周病 抜歯 何本」という本数の話が先行するのは、本数が最も分かりやすい情報だからです。診療時間が限られた場面では、歯1本ずつの検査値や骨の残り具合を全部説明するより、結論としての本数を伝えるほうが早く伝わります。その結果、患者さんの記憶には数字だけが強く残ります。
ところが臨床上、抜歯の本数は固定された数値ではありません。歯周ポケットの深さ、歯のぐらつきの程度、歯を支える骨がどれだけ残っているか。これらは炎症のコントロール状況によって変化しうるものです。歯石除去や炎症の管理を行ったあとの再評価で、当初の見立てと異なる判断になることもあります。
本数という数字は、あくまである時点の検査結果から導かれた見通しです。数字そのものより、その数字を支えている検査データの中身を確認することで、判断の輪郭がはっきりしてきます。
別の視点で確かめたいと考えるのは自然なこと
複数本の抜歯という提案に対し、別の歯科医師の見解を求めることは、治療から逃げる行為ではなく、情報を揃えるための現実的な手段です。仕事や家族の予定を抱えながら、何本もの歯を失う判断をその場で下すのは簡単ではありません。迷う時間があってよい場面だという見方ができます。
重度歯周病は、歯周ポケットの数値、動揺の程度、根の分かれ目の病変、噛み合わせの負担など、複数の要素が重なって進みます。読み取る情報が多いぶん、術者によって保存の見通しに幅が出ることもあります。全顎治療計画としてどう組み立てるかによっても、残す歯の役割は変わってきます。
愛育クリニック麻布歯科ユニットには港区や麻布周辺から、他院での説明に納得しきれずお越しになる方がいらっしゃいます。レントゲンを含めた再評価を行うことで、どの歯にどれだけの余力が残っているのかを、数値と画像の両面から確認していくことができます。
歯周病で歯が抜けるとき、壊れているのは歯ではなく土台

歯を支える歯槽骨が溶けていく仕組み
歯周病で歯を失うのは、歯そのものが虫歯のように壊れるからではなく、歯を支えている歯槽骨(歯の根を埋めている顎の骨)が失われるためです。抜歯を勧められた歯も、多くの場合、歯冠部分は健康なまま残っています。土台が痩せた結果、支えきれなくなっているという状態です。
骨が減る過程には、体の免疫反応が関わっています。歯と歯ぐきの境目にたまった細菌の塊が長く居座ると、その毒素に反応して体が炎症性の物質を出します。この物質が骨を吸収する細胞を活性化させ、細菌の近くにある骨から少しずつ失われていきます。
つまり、歯周病における骨の減少は細菌が直接骨を溶かしているのではなく、感染に対する体の防御反応が長引いた結果として起こる変化だと考えられています。この視点に立つと、細菌の量を減らし炎症を鎮めることが、骨の減り方に影響しうる理由も見えてきます。
歯ぐきの腫れと骨の破壊は同じ速さで進まない
歯ぐきの見た目と骨の状態は一致しません。ここが、患者さんの実感と診断結果がずれる最大の理由です。歯ぐきの腫れや出血は数日から数週間で変化する表面の症状ですが、骨の吸収は年単位でじわじわと形を変えていく現象だからです。
ブラッシングを頑張って歯ぐきの腫れが引くと、「治ってきた」と感じる方は少なくありません。ところが、いったん失われた骨が自然に元の高さへ戻ることは、通常は期待できないとされています。逆に、歯ぐきが引き締まって見えるのに、その奥で骨の吸収が続いている場合もあります。
この時間差があるため、歯周病の評価では見た目の炎症と骨の残り具合を分けて確認します。レントゲン画像で骨の輪郭を追い、歯ぐきの状態と重ね合わせることで、今どちらが問題なのかを切り分けていくという流れになります。
痛みが出ないまま重度歯周病に至る理由
重度歯周病が痛みなく進むのは、炎症が慢性的に続くタイプであり、急激に圧が高まる虫歯の痛みとは性質が異なるためです。歯の神経は生きたままなので、しみたりズキズキしたりする信号は出ません。骨が減っていく部位に痛覚が乏しいことも、自覚が遅れる一因とされています。
そのため、はじめて異変を感じるのが「歯が浮く」「硬いものを噛むと違和感がある」「歯が長くなった気がする」といった段階になることがあります。管理職として日々の予定が詰まっていると、この程度の変化では受診の優先順位が上がりにくいのも実情ではないでしょうか。
結果として、痛みという入口を通らずに何本もの歯が同時に進行し、抜歯の話がまとめて出てくる構図が生まれます。逆に言えば、痛みがないまま進んだ歯には、細菌のコントロール次第でまだ余力を残しているものが混ざっている可能性もあり、そこを一本ずつ見極める作業が診断の出発点になります。
ポケット・動揺度・骨の残り、数字が示す歯の余力

歯周ポケットの深さが意味していること
歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目にできる溝)の深さは、その歯がどこまで感染にさらされているかを示す数値です。健康な状態では2〜3mm程度に収まりますが、4mmを超えると歯ブラシの毛先が届かない領域が生まれます。6mm、7mmと深くなるほど、内部で歯石や細菌が守られた状態になり、通常のケアだけでは改善しにくくなります。
検査では1本の歯につき4〜6か所を測ります。同じ歯でも、頬側は3mmなのに内側だけ8mmということが珍しくありません。この「部位ごとのばらつき」こそが、抜歯か保存かを分ける手がかりになります。
数値と併せて確認するのが、測定時の出血や膿の有無です。深いポケットでも出血がなければ炎症が落ち着いている可能性があり、逆に浅くても出血が続けば活動的な炎症が残っていると読み取れます。1本ずつの数値表を見せてもらうと、口の中の状況が具体的に見えてくるでしょう。
動揺度0〜3度で見るぐらつきの段階
歯のぐらつきは、動揺度という0度から3度までの4段階で記録されます。0度は生理的な範囲、1度は前後にわずかに動く状態、2度は前後と左右に動く状態、3度は上下方向にも沈み込む状態です。指で触って揺れると感じる時点で、多くは2度以上に該当します。
ここで押さえておきたいのは、動揺度が高いこと自体が即座に抜歯の理由にはならないという点です。強い炎症で歯根膜(歯と骨をつなぐ繊維の層)が腫れている場合、炎症が引くと揺れが軽くなることがあります。噛み合わせの一部に力が集中して揺れているときも、調整によって落ち着く場合があるとされています。
反対に、炎症を抑えても3度の動揺が残る歯は、支える骨がすでに乏しいと判断される傾向があります。同じ「ぐらぐら」でも、原因が炎症なのか力なのか骨の喪失なのかで見通しは変わるため、初回の数値だけで結論づけない姿勢が求められます。
レントゲンとCTで読む歯槽骨の残存量
残せる歯かどうかを最終的に左右するのは、歯槽骨がどれだけ残っているかという歯槽骨 残存量の評価です。レントゲンでは、歯根の長さに対して骨がどの高さまで付いているかを見ます。歯根の半分程度まで骨が保たれていれば保存を検討しやすく、先端近くまで吸収が及ぶと支持力の回復は難しくなります。
ただし二次元のレントゲンには限界があります。骨の吸収が舌側だけに起きている場合や、他の歯根と重なる部位は、平面画像では実態がつかみにくいのです。当院では歯科用CTを用いた立体的な把握も行い、骨の欠損がすり鉢状に限局しているのか、水平に広く失われているのかを確認しています。
この形の違いは重要で、限局した縦方向の欠損は治療によって改善が期待できる場合があり、広範囲の水平な吸収は回復が見込みにくいとされています。重度歯周病で複数本の抜歯を提示された方こそ、骨の「量」だけでなく「形」まで見た評価を受ける価値があると言えるでしょう。
歯科医が抜歯を勧めるときの判断基準

支持している骨が歯根のどこまで残っているか
抜歯が検討される大きな分かれ目は、歯根のうちどれだけの長さが歯槽骨に支えられているかという点です。歯根の半分以上が骨に埋まっていれば、噛む力を受け止める余力が残っている場合があります。反対に、骨の吸収が根の先端付近まで及んでいると、支える面積そのものが乏しく、治療後も安定を保ちにくい状況になります。
同じ「重度歯周病」という言葉でも、骨がどの面から失われているかで見通しは変わります。歯根の周囲全体で均等に減っているのか、一方向だけがくぼむように吸収されているのかによって、改善を期待できる度合いが異なるためです。局所的な骨の欠損であれば、炎症の原因を取り除いたあとに状態が落ち着くこともあります。
歯槽骨 残存量の評価には、平面のレントゲンだけでなく立体的な把握が役立つ場面があります。当院では歯科用CTを用いた診断も行い、骨がどの方向にどの程度残っているかを確認したうえで、保存の可能性を検討しています。
歯根の形と根の分かれ目に生じた病変
歯根そのものの形態も、残せるかどうかを左右します。歯根が細く短い歯や、根が大きく湾曲している歯は、骨の減少に対する耐性が低くなりやすい傾向があります。歯根が縦方向に割れている場合は、その部分から細菌が入り込み炎症が持続するため、保存が難しいと判断されることが少なくありません。
奥歯では、複数ある歯根の分かれ目に炎症が及ぶ根分岐部病変が判断の鍵になります。この部分は器具が届きにくい構造をしており、汚れが残りやすい場所です。歯ブラシや歯間ブラシでも到達しづらく、患者さんご自身のケアだけで清潔を保つには限界があります。
「奥歯だけ何度も腫れる」と感じてきた方は、この分かれ目の状態が関係している可能性があります。どの程度病変が広がっているかによって、経過を見ながら残す道と、早めに整理する道のどちらを選ぶかが変わってきます。
糖尿病・喫煙など全身と生活の背景
歯そのものの状態が同じでも、全身の状況や生活習慣によって抜歯の判断は動きます。糖尿病で血糖のコントロールが安定しない場合、細菌への抵抗力が下がり、歯周組織の炎症が落ち着きにくくなることが知られています。喫煙習慣がある方では、歯ぐきの血流が低下し、治療後の組織の回復が緩やかになる傾向があります。
働き盛りの世代では、多忙で通院が途切れがちになったり、ストレスや睡眠不足が重なったりする場面もあるでしょう。歯ぎしりや食いしばりが強い方は、揺れている歯にさらに負担がかかるため、保存の見通しを慎重に考える必要が出てきます。
こうした背景は、抜歯を勧める理由になるだけでなく、改善によって判断が変わる要素でもあります。禁煙や血糖管理、噛む力の分散といった条件が整えば、当初は難しいとされた歯が経過観察の対象に移ることもあるため、初回の説明時に生活面の情報を共有しておくと診断の精度が上がります。
根分岐部病変が、奥歯の行方を分ける

奥歯の根の間に病変が広がっていく流れ
奥歯が抜歯の候補に挙がりやすいのは、根が複数に分かれており、その分かれ目に炎症が入り込むと歯ブラシが届かなくなるためです。この分かれ目に生じる病変を根分岐部病変と呼びます。上の奥歯は3本、下の奥歯は2本の根を持つことが多く、根が枝分かれする位置は歯ぐきのすぐ下にあります。
歯周ポケットが深くなり、歯槽骨の吸収が分かれ目の高さに達すると、そこに細菌の巣ができあがります。分岐部は溝や凹みが複雑に入り組んだ構造で、器具の先端も届きにくい部位です。
前歯や小臼歯であれば根は1本のことが多く、同じ深さのポケットでも清掃のしやすさがまったく違います。「奥歯だけ抜くと言われた」という説明に心当たりがある方は、この構造上の差が背景にある場合が少なくありません。
進行の程度で変わる保存の見通し
根分岐部病変は、分かれ目にどこまで病変が入り込んでいるかによって、大きく3段階で捉えるのが一般的です。器具が分岐部の入口に少し入る程度の初期、内部まで入るものの反対側までは貫通しない中等度、頬側から舌側へ器具が通り抜ける重度、という分け方になります。
初期であれば、歯石除去と歯ぐきの形態を整える処置によって清掃可能な状態に持ち込める場合があります。中等度では、外科的に分岐部を清掃しやすくする処置や、歯周組織の再生を目指した治療が検討されることもあります。
貫通した重度の状態では、清掃状態を維持し続けること自体が難しく、保存の見通しは慎重に評価されます。ただし、貫通していても動揺が少なく、噛み合わせの負担が小さければ、経過を追いながら使い続ける判断が成り立つ場面もあるという見方ができます。
根ごとに状態を分けて考えるという発想
1本の歯を「残すか抜くか」の二択で見ないという考え方があります。奥歯は複数の根で支えられているため、3本のうち1本だけ骨が失われ、残り2本はしっかり支えられている、という状態が起こり得ます。この場合、傷んだ根だけを取り除き、残りの根で歯を機能させる方法が検討対象になります。
この判断には、根の分かれ方、根同士の間隔、根の周囲に残る歯槽骨の量、神経を取る処置と被せ物までを含めた治療全体の見通しが関わります。根が癒合して分けられない形態であれば適応外です。
重要なのは、こうした選択肢の有無が、二次元のレントゲンだけでは読み切れないという点にあります。当院では歯科用CTを用いて、根の周囲に骨がどの方向から残っているかを立体的に確認したうえで、根単位での評価を行っています。
重度歯周病でも歯を残せる可能性が出てくる条件

歯周基本治療後の再評価で判断が変わる場面
初診時に「抜歯」と判断された歯が、歯周基本治療を終えた後の再評価で保存の候補に戻ることがあります。炎症で歯ぐきが腫れている状態では、歯周ポケットの測定値が実際より深く出やすく、歯のぐらつきも強く感じられます。腫れが引くと数値そのものが変化し、同じ歯でも見え方が変わってくるためです。
歯を支えている歯槽骨の量が本当に不足しているのか、それとも炎症による一時的な動揺なのか。この2つは初診の段階では区別しきれない場合があります。基本治療から数週間から数か月おいて、ポケットの深さ、出血の有無、動揺度を測り直し、レントゲンで骨の状態を比べる。この再評価を経て初めて、抜歯すべき歯が何本なのかという判断が固まってきます。
「一度言われた本数がそのまま決定事項なのか」と気になる方は少なくありません。治療の途中で数字が動くこと自体は、診断のプロセスとして自然な流れという見方ができます。
スケーリングとルートプレーニングが担う役割
歯を残せるかどうかを左右するのは、歯根の表面に付着した細菌の塊と歯石をどこまで除去できるかです。歯周ポケットの奥深くに入り込んだ歯石は、歯ブラシでは届きません。スケーリングで歯ぐきの上下に付いた歯石を取り除き、ルートプレーニングで歯根の表面を滑らかに整えることで、細菌が再び定着しにくい環境をつくります。
この処置によって歯ぐきの炎症が鎮まると、腫れて浮いていた組織が引き締まり、歯周ポケットが浅くなることがあります。歯根膜や歯ぐきが歯根面に再び密着することで、歯の支えが部分的に回復するケースもみられます。当院では超音波を用いた歯周病ケアやブラッシング指導を組み合わせ、歯根面の状態を整えていきます。
見落とされやすいのは、この効果が患者さん自身のセルフケアと連動している点です。歯間ブラシやフロスでポケット周囲のプラークを減らせているかどうかで、再評価時の数値の出方が変わってきます。
歯周組織の再生を目指す治療という選択肢
骨の失われ方の「形」によっては、歯周組織の再生を目指した治療が検討される場合があります。歯槽骨の吸収には、水平的に全体が低くなるタイプと、歯根の周囲がすり鉢状に深く落ち込むタイプがあり、後者のように骨の壁が周囲に残っている形態では、再生を期待できる余地があるとされています。
重度歯周病の外科的な対応としては、歯ぐきを開いて歯根面を直接清掃する手術や、失われた歯周組織の再生を目指す手術が挙げられます。ただし、どの歯にどの方法が適するかは、骨欠損の形と深さ、残っている骨の壁の数、噛み合わせの負担などを総合して判断されるもので、すべての歯に当てはまるわけではありません。
港区周辺で複数本の抜歯を提示された方にとって、こうした選択肢が自分の歯に当てはまるかどうかは、レントゲンやCTでの骨の形態評価を経なければ見えてきません。骨欠損の形を確認する作業が、残せる歯の線引きを具体的にしていきます。
抜歯の本数は、全顎治療計画のなかで変わる

1本単位ではなく口全体で考える理由
歯周病の抜歯本数は、1本ずつの点数評価ではなく、口全体をひとつの構造として見たときに決まります。同じ程度に骨が減った歯でも、周囲に頼れる歯が残っているか、噛む力が集中する位置にあるかで、残す価値がまったく変わってきます。
たとえば動揺度が同じ2本の歯があっても、片方が隣の健康な歯と連結できる位置にあり、もう片方が孤立していれば、前者は支えを分け合うことで機能を保てる可能性があります。孤立した歯は噛む力を一手に受けるため、負担が集中して悪化しやすい傾向があります。
「歯周病 抜歯 何本」という問いに一律の答えが出ないのは、この相互関係があるからです。全顎治療計画では、上下左右の噛み合わせのバランス、力の流れ、歯槽骨の残存量の分布を並べて検討し、どの歯にどれだけ負担をかけられるかを見積もっていきます。
残す歯に噛み合わせの役割を割り振る設計
重度歯周病の治療計画では、残した歯それぞれに「担ってもらう役割」を決めていきます。しっかり噛む力を受け止める歯、前後のバランスを取る歯、入れ歯やブリッジを支える歯といった具合に、機能を分担させる考え方です。
この設計をせずに残せる歯をすべて残すと、支えの弱い歯に力が集中し、かえって早く失う結果につながる場合があります。反対に、骨の支持が少ない歯でも、力のかかりにくい位置で連結して補強すれば、噛み合わせの高さを保つ役目を果たせることがあります。
実際の判断では、上下の歯が接触する位置と強さを確認し、レントゲンで読んだ骨の状態と重ねて検討します。「この歯は抜かずに、代わりに負担を減らす」という選択が成り立つかどうかは、口全体の力配分を組み替えられるかにかかっているという見方ができます。
抜いた後をどう補うかで抜歯の範囲も動く
抜歯の本数は、抜いた後をどう補うかという補綴の計画によっても前後します。入れ歯を選ぶのか、ブリッジで橋渡しするのか、インプラントを検討するのかによって、支えとして必要な歯の位置や本数が変わるためです。
入れ歯を支える金具をかける歯が必要な設計であれば、その位置にある歯はできるだけ保存を試みる価値があります。一方、条件を満たす場合にインプラント治療で支えを別に確保できるなら、無理に弱った歯を残さない判断が合理的なこともあります。当院ではストローマンインプラントとGCインプラントを取り扱い、CT検査を含む精密な診断のうえで適応を検討していますが、診断の結果によっては処置が難しい場合もあります。
「何本抜くか」を先に確定させるのではなく、補い方の候補を複数並べたうえで、それぞれの場合に必要な抜歯範囲を比較する。この順序で説明を受けると、なぜその本数なのかが患者さん自身の言葉で納得できるようになります。
別の歯科医院で相談するとき、何を持って行くか

再評価に必要な資料と精密検査の内容
別の視点で診てもらう際に最も役立つのは、現在通っている歯科医院で撮影されたレントゲン画像と、歯周ポケットの検査結果を記録した用紙です。これらがあると、初診の時点で「いつの時点でどこまで骨が失われていたか」という時間軸の情報が加わり、判断の精度が上がります。資料の提供は依頼すれば応じてもらえることが多く、診療情報提供書という形で発行される場合もあります。
手元に資料がない場合でも相談は可能です。当院ではCT・レントゲンによる画像診断を行っており、歯槽骨の残存量や根分岐部の状態を立体的に確認することができます。歯周ポケットの深さは1本の歯につき複数点を測定し、出血の有無、動揺度、噛み合わせの接触状態まで含めて記録していきます。
重度歯周病では、こうした一連の精密検査を経てはじめて「歯周病の抜歯が何本必要か」という問いに具体的な数字で答えられる段階に入ります。検査前の段階で示された本数は、あくまで暫定的な見立てという位置づけになります。
説明を受けるときに聞いておきたい質問
抜歯が提案された歯について「なぜこの歯は残せないのか」を1本ずつ確認することで、説明の中身が具体的になります。骨の支持がどの程度残っているのか、根の分かれ目に病変があるのか、歯根が割れている可能性があるのか。理由が歯ごとに異なるのは自然なことで、その違いが説明されるかどうかが一つの目安になります。
加えて、「歯周基本治療を行った後に判断は変わり得るか」「今すぐ抜くべき歯と、経過を見られる歯の区別はあるか」といった時間軸の質問も有効です。すべてを同時に抜く必要があるケースと、段階を分けて進められるケースでは、その後の生活への影響がかなり違ってきます。
抜いた後の補い方についても、選択肢と費用の幅を先に聞いておくと全体像がつかめます。入れ歯、ブリッジ、インプラントのどれを想定した計画なのかによって、残す歯に求められる役割も変わるためです。管理職として時間の制約がある方ほど、この確認が通院計画の見通しにつながります。
通いやすさと長期メンテナンスの体制
重度歯周病の治療は、抜歯や外科処置が終わった時点で完結するものではなく、その後の維持管理が歯の寿命を左右します。歯周組織は一度失われた骨が自然に元へ戻ることはないため、再発を早期に捉える仕組みが必要になります。通院先を選ぶ際に、治療そのものだけでなく継続の体制を見ておく理由がここにあります。
当院では歯科衛生士による専門的な予防治療とメインテナンスを診療の柱の一つとしており、スケーリングやルートプレーニング、ブラッシング指導を通じて、治療後の状態を定期的に確認していきます。港区南麻布という立地上、仕事帰りや外出のついでに立ち寄る形で通われる方もいらっしゃいます。
数年単位で同じ歯科医院に通うことになるため、担当者が状態の経過を把握しているかどうかは、わずかな変化への気づきやすさに直結します。前回と比べてポケットが1ミリ深くなった、特定の歯だけ出血が続いている——こうした小さな差分を積み重ねて見られることが、全顎治療計画を長く保つ土台になります。
「本数はいつ決まる?」──よくある疑問への回答

抜歯の本数は診断で変わることがある?
歯周病の抜歯本数は、初診時の見立てから変わることがあります。初回の診察は、その時点で得られた情報にもとづく暫定的な判断であり、炎症で歯ぐきが腫れている状態では、歯の動きが実際より大きく感じられる場合があるためです。
歯石やプラークを除去し、炎症が落ち着いてから再度検査すると、動揺度が下がり、歯周ポケットの数値も浅くなることがあります。逆に、清掃しても改善が乏しく、抜歯を検討せざるを得ないと分かる歯も出てきます。
「何本抜くか」という数字は、レントゲンやCTで歯槽骨の残存量を確認し、根分岐部病変の有無まで含めて評価した後に、はじめて輪郭が見えてくるという性質のものです。数字が動くこと自体は、診断が丁寧に進んでいる証拠とも言えるでしょう。
「今は抜かない」と判断した歯はどうなるのか
保存を選んだ歯は、そのまま放置されるわけではなく、経過を追いながら役割を見直していく対象になります。重度歯周病で骨の支えが少ない歯は、噛む力の負担配分や炎症の再発によって、状態が変動しやすいという特徴があります。
そのため、定期的に歯周ポケットの深さ、出血の有無、ぐらつきの程度を測り、前回の数値と比較していきます。安定していれば保存を続け、悪化の傾向が見えたときには、あらためて方針を話し合う流れになります。
「一度残すと決めたら、もう抜けないのでは」と心配される方もいらっしゃいますが、実際には逆です。今は抜かずに様子を見るという判断は、将来的な選択肢を保留しておく決め方であり、数年先に噛み合わせの支えとして役立つ場合もあれば、その時点で改めて抜歯を選ぶ場合もあります。
治療期間と通院回数が読めない不安
全顎治療計画では、期間や回数は「歯周基本治療」「再評価」「その後の処置」という区切りごとに見通しを立てていきます。全体を一度に確定させるのではなく、段階ごとに次の見込みを共有していく進め方が一般的です。
お仕事の予定が読みにくい方にとって、終わりの見えない通院は大きな負担になります。当院では検査結果をもとに、今どの段階にいるのか、次に何を確認するのかをご説明しながら進めています。港区や麻布周辺にお勤めの方からは、平日夜や土曜の枠を組み合わせて通いたいというご相談も寄せられます。
重度歯周病の治療は、炎症が落ち着いた後もメンテナンスが続きます。回数の多さそのものより、1回ごとに何を評価しているかが分かると、通院の意味が実感しやすくなるという声もあります。
歯を抜く前に、もう一度きちんと診てもらいませんか

この記事で押さえておきたい視点の整理
歯周病で提示される抜歯の本数は、検査資料と治療の経過によって動きうるものです。歯周ポケットの深さ、動揺度、歯槽骨の残存量、根分岐部病変の広がり。これらは互いに関連しながら、1本ごとの余力を形づくっています。数字が並んだだけの説明では、その関連までは見えてきません。
もう一つの軸が、口全体をどう機能させるかという全顎治療計画の視点です。噛み合わせを支える役割をどの歯に持たせるかによって、残す価値のある歯とそうでない歯の線引きは変わってきます。歯周基本治療のあとの再評価で炎症が引き、動揺が落ち着いた結果、初回の見立てと異なる判断に至る場面もあります。
「何本抜くのか」という問いは、本来「どの歯に、どんな役割を残すのか」という問いと表裏一体です。本数だけを聞いて決断を迫られていると感じるなら、その判断の根拠にあたる資料をもう一度確認する余地が残されていると言えるでしょう。
重度歯周病に向き合う当院の診療姿勢
当院では、重度歯周病の患者さんに対して、まず現在の状態を客観的な資料で把握することから始めています。CT・レントゲンによる画像診断を用いて、歯を支えている骨が歯根のどの高さまで残っているか、奥歯の根の分かれ目に病変が及んでいないかを確認します。目視と手指の感覚だけでは読み取りにくい部分が、画像によって輪郭を持ってくるためです。
そのうえで、スケーリングやルートプレーニングといった歯周基本治療を進め、ブラッシング指導とメンテナンスを組み合わせながら、組織の反応を見ていきます。重度の症例では、失われた歯周組織の再生を目指す処置が検討される場合もあります。
愛育クリニック麻布歯科ユニットは「全ての患者さんを家族と想う」という考えのもと、歯科医師と歯科衛生士がチームで関わる体制を取っています。港区南麻布という立地柄、仕事の合間に通われる方も多く、治療の見通しを共有しながら進めることを重視しています。
セカンドオピニオンを考える患者さんへ
別の歯科医院で意見を聞くことは、現在の主治医を否定する行為ではありません。重度歯周病の治療方針は、保存を優先する考え方と、機能回復を早める考え方のどちらに重心を置くかで組み立てが変わります。複数の視点に触れることで、自分がどちらを望むのかが言葉になっていく方もいらっしゃいます。
相談の場では、これまでに撮影した画像や検査結果があると、状態の推移まで含めた話ができます。前回からどれだけ骨が減ったのか、どの歯の動揺が増したのか。時間軸の情報は、1回の検査だけでは得られない判断材料になります。
抜歯を勧められて迷いを抱えたまま日々を過ごしている方、歯のぐらつきが気になり噛むことに不安を感じている方は、一度当院にご相談ください。当院では重度歯周病の検査と治療計画のご説明に対応しており、納得したうえで次の一歩を選んでいただける場をご用意しています。
監修:愛育クリニック麻布歯科ユニット
所在地〒:東京都港区南麻布5丁目6-8 総合母子保健センター愛育クリニック
電話番号☎:03-3473-8243
*監修者
愛育クリニック麻布歯科ユニット
ドクター 安達 英一
*出身大学
日本大学歯学部
*経歴
・日本大学歯学部付属歯科病院 勤務
・東京都式根島歯科診療所 勤務
・長崎県澤本歯科医院 勤務
・医療法人社団東杏会丸ビル歯科 勤務
・愛育クリニック麻布歯科ユニット 開設
・愛育幼稚園 校医
・愛育養護学校 校医
・青山一丁目麻布歯科 開設
・区立西麻布保育園 園医
*所属
・日本歯科医師会
・東京都歯科医師会
・東京都港区麻布赤坂歯科医師会
・日本歯周病学会
・日本小児歯科学会
・日本歯科審美学会
・日本口腔インプラント学会
カテゴリー:コラム 投稿日:2026年10月5日